決してひっくり返らない“ムカデ経営”でめざすは国内3兆円=アークス 横山 清 社長

聞き手・構成:大木戸 歩
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次の目標は1兆円

──地方では早いスピードで少子高齢化が進み、小売業にとっては厳しい状況が続きます。さらに、コンビニエンスストア(CVS)やドラッグストア(DgS)といった異業態との競合も課題です。

横山 当社は北海道、東北で事業展開していますので、経済も停滞しているし、将来の展望はそれほど明るくありません。

 日本全体で見ても、少子高齢化や人口減少は避けることができない問題。どんなに掛け声をかけたところで、かつてのような高度成長は望めないし、現状維持さえ厳しい状況です。

 私たちはこうした環境の変化や、さまざまな自然現象に順応しながら、今ある問題点を解決し、より豊かな生活を追求していく必要があります。そのベースとなるのが、食生活を中心とした個々人の日常です。

 人口が減少し、従来の商品構成では売上を確保できないから、どこもかしこも食品に参入する。高度な管理技術を必要としない加工食品を安く売って、売上をつくろうとしているのです。そして安売りで利益が厳しくなると、次は生鮮食品や総菜を袋に入れてパッケージ化した「お“袋”の味」をたくさんつくる(笑)。

 とりあえず口に糊するだけなら、CVSでいいでしょう。DgSも食品の売上を増やしています。ただ、CVSだけでは食生活のすべてをまかなうことはできません。

 生活者の豊かな食生活を守るのは、SMの役割です。だからそれをしっかり確立しなければいけません。

 最近、『貧困大国アメリカ』(堤未果・著/岩波新書)という本を読んで大変、ショックを受けました。アメリカの大規模農業と巨大資本についてまとめたルポルタージュです。

 アメリカでは人口の25%が「フードスタンプ」(※低所得者向けに政府が実施している食料費補助)を受け取っていると言います。そうした低所得層が、安くて、簡単に空腹を満たすことができるジャンクフードを食べており、それが肥満の原因になっているのです。貧困であることが、メタボリックシンドロームにつながるのです。

 それに加えて、予算の関係で学校給食までジャンクフードのようなものを出しているとありました。アメリカでは5年で地方自治体の80%が破綻するとも言われています。これは大変なことです。

 そう考えたら、われわれ小売業にはもっとやるべきことがあります。健康や安全、安心だけでなく、食品の安定供給も確保しなくてはいけない。経営効率のためには在庫の削減が必要ですが、場合によってはある程度、効率を犠牲にしても在庫を持つ必要があるのかも知れません。

 国内市場はこの先、確実に縮小していき、その中で企業規模と企業間格差は拡大していきます。企業単体では一つの点にすぎないけれど、アークスは各社の点がつながって線になり、それが面になり、そして年商1兆円をめざす立体形になる。

 3つのエリアのアークスが、同一資本である必要はありません。今ある大企業や、生協とは別の思想で、一般の生活者のための小売業をつくりあげたいですね。

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