決してひっくり返らない“ムカデ経営”でめざすは国内3兆円=アークス 横山 清 社長

聞き手・構成:大木戸 歩
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協同組合と株式会社の発想を合わせた組織に

──アークスはこれまで「八ヶ岳連峰経営」として、各地の有力チェーンが連なり、尊重し合うかたちでマネジメントしてきました。経営手法は今後、変わっていきますか?

横山 経営手法については、資本主義の単純な力や量の原理だけでは済まないことです。

 資本に関しては、個々の経営者が所有する「マイ(My)・カンパニー」から、「アワ(Our)・カンパニー」へ──つまり、特殊なスキルを持った人でなくても経営できる体制をつくり、企業が未来永劫、存続できるようにしていこうと考えています。

 モデルとしては、株式会社と協同組合を足して2で割るイメージです。協同組合的な「一人はみんなのために、万人は一人のために」という思想は、素晴らしいと思います。しかし、そうした競争のない組織で腐敗が起きがちであることを考えると、効率主義もきちんと取り入れなくてはいけません。株式会社として極めて厳しい生存競争の中で磨き上げたヒト、モノ、カネ、情報は、企業にとって不可欠な経営資源だからです。

 ただ、これだって行き過ぎれば過度な効率主義に陥ります。コストではあるけれども従業員をコスト扱いしない。労働力はコストではない、という考え方を実現できて、なおかつ将来に向けた投資のための収益を挙げられるような仕組みが必要です。足りないものは補い、不要なものは上手に処理しながら、未来につなげていきたいですね。

──これまでアークスは、自らM&Aを仕掛けるというよりは、受け身な姿勢だったと思います。新たなチェーンをグループに受け入れる際の条件などはあるのでしょうか。

横山 具体的にはありません。たとえばユニバースとの経営統合は、北海道と青森ですから地理的には「飛び地」のケースです。12年にグループ入りした篠原商店(北海道/篠原肇社長)のSMの店舗数は2店舗で、年商は50億円。ユニバースの年商が1000億円規模ですから、両社は全く違います。

 ただ、篠原商店の年商50億というのは、規模自体は小さいですが、1店舗で25億円を売上げていることになります。しかも店舗があるのは、北海道の網走ですから、力のある企業だと思います。

 一方、中堅都市には、店舗数は多いけれども1店舗当たりの売上高が10億円程度という企業がたくさんあります。そうした企業には収益性が低い企業が少なくありません。それをどう整理するのかが、これからの課題です。

 リストラをせずに新しい体制をつくる方法はあると思うし、アークスにはその実績があります。今は同じような売上、利益でも、10年も経てばガラリと変わる。そこで働いている従業員にとっての働く意義や彼らの生活実態が、望んでいる方向に向かっていくようにしたいと考えています。

 人間の行動を決めるのは大抵、欲求ですから、人は自分の利益に従って動きます。「会社のために」と言ってする行動が、結果的に自分の満足感につながるような会社にいられたら幸せですよね。何とかそういう環境をつくっていきたいですね。

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