ドラッグストアの針路 #5 新体制スギHDは“天下取り”をめざすか

森田俊一(流通ジャーナリスト)
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スギホールディングス(愛知県:以下、スギHD)は2021年1月、社長を交代する人事を発表した。現社長の榊原栄一氏が代表権のある会長になり、創業者・杉浦広一氏の長男で現副社長の杉浦克典氏が社長に昇格する。大手ドラッグストアチェーンではここ数年、代替わりが活発化しており、業界トップのウエルシアホールディングス(東京都)、2位のツルハホールディングス(北海道)も社長が交代している。新社長に就任予定の杉浦氏は40代前半。スギHDの若き経営トップは、ドラッグストア業界の“天下取り”をめざすのか――。

スギ薬局

逆風の中、東京・新宿に化粧品強化店舗をオープン!

 東京・新宿に21年1月末にオープンした「スギ薬局新宿三丁目店」。地上1階、地下1階の2層構造、売場面積約700㎡、スギ薬局としては珍しく、外観は白を基調としたデザインを採用した店舗だ。

 入口から店内に入って地下に降りると、同社最大級の化粧品売場が広がっており、一般化粧品や制度化粧品、流行の韓国コスメのほか、日本最大級のコスメショッピングアプリ「NOIN(ノイン)」とのコラボレーション売場、男性用化粧品売場も設けられている。東京随一の繁華街、歌舞伎町がすぐ近くという土地柄もあってか、化粧品に力が入っていることがひと目でわかる。

 新型コロナウイルスの感染拡大でマスクを着用する人が増え、足元では化粧品需要が低下、インバウンド需要激減という逆風もあって、ドラッグストア各社は打撃を受けている。それはスギHDも例外ではない。しかし、スギHDの「スギ薬局」事業の20年3~11月期における化粧品を含む「ビューティー」部門の売上高は対前年同期比0.7%減と微減にとどまっている。

 前述の化粧品需要の低下により、タッチアップで美容指導を行うことが多い百貨店などの業態は苦戦を強いられているところがほとんどだ。だが、スギHDでは「化粧品電子カルテ」などのオンラインツールを導入し、各地に配置された「ビューティーアドバイザー」と呼ばれる美容部員が地域に根差したきめ細かい提案を実施している。コロナ禍におけるスギHDの健闘は、こうした取り組みが奏功したと見られる。

スギHDの強固な経営基盤

 売上高構成比のバランスがとれていることもスギHDの特徴だ。20年3~11月期における部門別の売上高構成比を見ると、主力の「調剤」が21.8%、一般用医薬品を中心とした「ヘルスケア」が21.3%、化粧品を中心とした「ビューティー」が18.3%。日用品を主体とした「ホーム」が19.9%、「フーズ」が18.6%となっている。

 化粧品を中心とした「ビューティー」部門の売上高比率は、前年同期(20年3~11月期)に21.0%であり、20年3~11月期と比べると3ポイント近く、比率が落ちていることがわかる。そのほかの部門が化粧品の落ち込みを埋めている構図となっており、他部門が不振部門を支える強固な経営基盤があるのだ。

 食品の売上高構成比が50~60%ある食品強化型チェーンや、化粧品が売上高全体の4割を占めるドラッグストアチェーンと違い、売上高に偏りがないのである。スギHDはいわば、「ドラッグストアらしいドラッグストア」を展開しているとも言える。そのうえで新宿・歌舞伎町近くという立地条件を考慮し、化粧品を大きく拡充した店舗に挑戦するという柔軟性も持ち合わせているのである。

「規模の拡大をあきらめたわけではない」

 地方でも、昨年11月に石川・金沢の繁華街、片町にオープンした店舗では、化粧品などが拡充されているという。各地域、各エリアの販売動向を勘案しながら店舗を展開していると見られる。

 そのほかスギHDは、ドラッグストアならではの事業にも力を入れている。店舗を拠点とし、健康の維持、病気の予防、未病といった取り組みを地域の医療機関、介護施設などと連携しながら実施している。また、在宅医療の実施店舗はすでに同社が地盤としている関東、中部、関西で約520店まで拡大しており、これだけ規模で展開するドラッグストアチェーンは少ない。

 ココカラファイン(神奈川県)との経営統合に際して、スギHDはマツモトキヨシホールディングス(千葉県)と競ったものの、統合は実現しなかった。しかし業界関係者からは「スギHDはM&A(合併・買収)による規模の拡大をあきらめたわけではないだろう」との観測が上がっている。21年5月から新体制がスタートする同社。まずは、杉浦克典氏の経営手腕に注目だ。

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