アクシアル リテイリング原和彦社長が答える「食品スーパー生き残りに必要な企業規模とは!?」

ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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イオンのSM大再編は合従連衡を招くか

──18年10月にイオン(千葉県/吉田明夫社長)グループがSM事業の再編計画をぶち上げました。これにより、全国各エリアに売上高5000億円規模の企業が誕生することになります。どのような影響があると見ていますか。

 当社としてはイオンさんだけを脅威と感じているわけではありませんが、これをきっかけに業界再編の機運が高まるのは確かでしょう。当社は以前から、(M&Aの)よいお話があれば前向きに検討してきました。業界全体が再編に意識が向くことは、当社にとっても好機となると思っています。

──アクシアルとして、再編に積極関与していくということでしょうか。

 ええ、持株会社制にしているのもそのためです。時代的な背景もあります。人口減少と高齢化によって、消費者の胃袋は相乗的に小さくなっていきますが、その一方でプレイヤーは増え続けています。出店余地は限られ、店舗開発の難易度は増しています。こうした点から考えても再編は進まざるを得ないでしょう。

 また、SDGs(Sustainable DevelopmentGoals:持続可能な開発目標)という観点もあります。今のよい生活を得るために、将来にツケを回すという行為が許されない時代になっています。

 今後、企業はSDGsのような取り組みを当たり前のようにやっていかなければなりません。しかしこうした取り組みを続けていくためには、企業としてある程度の体力、そして体質がなければなりません。このような観点から見ても、企業統合は進んでいくでしょう。

 それと、ITなど新しい技術が次々と登場していますので、これらの新技術を取り入れるための設備投資も必要となってきます。ネットスーパーも同様ですが、新しいものには当然投資がかかります。一定の企業規模がなければ、こうした投資の問題にも対応できないのではないでしょうか。

生き残りに必要なSMの企業規模は……

──その「一定の規模」はどのくらいの売上高あるいは店舗数になると見ていますか。

 ドミナントのつくり方によっても変わりますので、何千億円何店舗と一概に言えませんが、最低でも売上高1000億円ほどの規模がないと厳しいのではないでしょうか。

 というのも、当社では、IT事業を手掛けるアイテック(新潟県/内藤裕社長)という企業を傘下に抱えています。このアイテックを完全子会社化したのが07年10月、ちょうど売上高約1000億円のころでした(編集部註:当時の社名は原信ナルスホールディングス、08年3月期の売上高は1115億円)。投資、そして人材のことを考えると、このくらいの企業規模が必要になってくると思います。

──出店よりもM&Aに投資コストを割いたほうが、効率よく企業規模を拡大できるという考えもあります。

 それは是々非々です。当社は、投資リターンや業界内での生き残りのためというのではなく、M&Aによって生み出したマスメリットを地域のお客さまに還元し、より豊かな暮らしに貢献することをめざしています。そのための手段の1つがM&Aというだけです。投資効率などはもちろん計算しますが、それだけを基準に判断しているわけではありません。

 これまでのSMのM&Aは、同業同士でくっついて規模を拡大しようとしてきたケースが多く見られます。こうした視点はもちろん今もありますが、たとえば工場を買うなど川上に遡って機能を高めていくことが今後は必要になるでしょう。

 ここでいう「機能」とは商品づくりだけではありません。ITや物流などさまざまな機能が考えられます。それらの部分を強化していくためのM&Aも考えていかなければなりません。

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