セブン& アイ 伊藤順朗常務に聞く「なぜ、今SDGsなのか?」「どう取り組むべきか?」

ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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「事業機会」にどうつなげるか

──「事業機会につなげる」という点について、もう少し詳しく教えてください。

伊藤 米ハーバード大のマイケル・ポーター教授が提唱した「CSV(クリエイティング・シェアド・バリュー:共通価値の創造)」という概念にもあるとおり、社会課題の解決を通じて経済的価値も創造するということです。

 社会課題の解決というのをミクロな視点で考えると、それはお客さまのニーズに置き換えられます。ニーズがあるということは、ビジネスのチャンス、つまり事業機会があるということです。生産財メーカーでは(SDGsの取り組みは)なかなかビジネスに直結しないかもしれません。ですが、小売業はお客さまや世の中の困りごとを解決することが売上・利益につながります。まさに一体であると考えています。

──SDGsのような取り組みは、やはりビジネスにつなげることが重要となるのでしょうか。

伊藤 それが理想ではあります。いわゆる寄付のような企業側がコストを払う社会貢献のアプローチもありますが、持続可能性を考えると、ビジネスにつなげて取り組んでいく必要があります。

 当然そのような考えで、すべてをうまく回していけるわけではありません。とくに環境問題などについては、「投資」としてやっていかねばならないでしょう。ただ、これもよくよく考えると、中長期的にはコスト削減につながると考えています。たとえば、太陽光パネルによって再生可能エネルギーに切り替えていくといった取り組みも、最初はパネル設置のコストがかかりますが、中長期的には電気代の低減につながりますよね。

各事業会社に“ミラー組織”を設置

──中長期のリターンにつながるとはいえ、現場は日々の予算を追いかけています。従業員のマインドをどのように変えていけばよいのでしょうか。

伊藤 本当に難しい問題です。とくに調達・仕入れの観点で考えたときに、持続可能な調達をしたいものの、実行すると価格が高くなってしまう、あるいは品質面でよいものができなくなってしまうという状況はよくあるでしょう。

 ですが、これも考え方次第です。「自分たちの一つひとつの商品開発がSDGsのどれに貢献できるのか。そういうことを考えながらやっていこう」と社内で言い続けています。

──従業員の意識を変えていくための組織体制について教えてください。

伊藤 19年2月に「CSR統括部」から名称変更した「サステナビリティ推進部」がその役割を担っています。私がCSR統括部にいた頃は6人のメンバーで構成されていましたが、現在は15人ほどの組織となっています。

 もう少し大きな組織の立て付けとして、グループ横断組織「CSR統括委員会」とその傘下にある5つの部会がそれぞれテーマを持って、事業を通じて社会課題解決に貢献する取り組みを実行しています。さらに傘下の事業会社にも、同委員会の“ミラー組織”を設け、業種・業態にあわせたCSRを推進する体制をとっています。

 すべてのグループ会社に設置できているわけではありませんが、セブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、そごう・西武、セブン&アイ・フードシステムズ(いずれも東京都)、ヨークベニマル(福島県)といった主要子会社はすべてミラー組織を設けています。これらの部会の取りまとめ役をサステナビリティ推進部が担っています。

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