経営統合で業容急拡大のイオン北海道、北海道食品小売シェアトップへの道筋

下田健司
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成長戦略のカギは「食品強化」

 では、中長期的にイオン北海道はどのように成長を図ろうとしているのか。

 2021年度から25年度までの5カ年の中期経営計画にはそれが明示されている。自社の将来像を「2025年のありたい姿」として定めた。そのまま引用すると、「『食』を基軸に、便利で楽しく、健康な毎日の暮らしをお手伝いする、北海道のヘルス&ウエルネスを支える企業」。ヘルス&ウエルネスはイオングループの成長戦略の一つでもある。これを食の点から提供するという意味が読み取れる。具現化するために「商品」と「店」の競争力向上が欠かせいないとして、商品では「イオン北海道独自の魅力的な商品」、店では「安全・安心、便利で楽しい店」を掲げ、競争力向上に取り組むという。
 
 合併によって売上の8割を占めるようになった食品。これを成長戦略の中心に据えるのは当然だろう。

 中計における主要テーマが食品の強化だ。食品強化のために取り組むのが「生鮮の強化」と「商品開発の強化」の2つだ。

 生鮮の強化では、食の宝庫である北海道の各地域との産地連携を打ち出す。たとえば、農産では地場限定商品の導入、水産ではエリア商品の発掘・開発、エリアバイヤーによる産地買い付け、畜産では地域ブランド肉の強化といった施策を挙げている。
 
 商品開発の強化では、食品商品開発部を新たに設け、新生イオン北海道のスタート時点から商品開発体制を強化している。加えて、商品開発強化のための重要インフラとなるイオン石狩プロセスセンターを新設した。21年8月に稼働を始めており、畜産・デリカを製造し、札幌圏にある50店舗強に供給している。地域食材を生かした商品開発のほか、アウトパック供給を拡大することで品揃え強化や店内作業の効率化を図るのがねらいだ。プロセスセンターを活用し、食のSPA(製造小売)化を図り、「強い食」の実現をめざすという。

北海道の食品小売シェアトップへ

 中計では数値目標も掲げている。

 21年度実績の売上高3216億円、営業利益66億円、売上高営業利益率2.1%、ROE(自己資本利益率)6.1%に対して、最終年度にあたる25年度には売上高3800億円、営業利益157億円、売上高営業利益率4%以上、ROE10%以上を計画する。とくに食品は、21年度実績2537億円から3000億円に拡大し、北海道内の食品小売シェアトップをめざすとしている。

 目標売上3800億円を達成するために必要となる成長率は年率4%程度。積極的な店舗投資を計画しており、計画通り進めば達成は十分可能だろう。だが、営業利益達成のハードルはかなり高い。売上高営業利益率は、旧イオン北海道で4%を超えているものの、旧マックスバリュ北海道では1%台にとどまっている。その点では、SM事業の収益性をどう高めるかが課題になる。

 合併のねらいでもある成長投資についてはかなり積極的だ。5カ年の投資総額は725億円(年平均145億円)。内訳は店舗投資に590億円、インフラ投資に135億円。8割を店舗投資に振り向ける計画で、売上目標の達成をめざす強い意思がうかがえる。
 
 新規出店では、SM、DSなど食品業態を5年間で69店舗出店する計画だ。このうち50店舗は小型SMの「まいばすけっと」だ。新型店にも挑戦し、札幌圏で出店可能な中小型店10店舗を出店する。GMSは2店舗のスクラップ&ビルドを計画するのみだ。

 積極投資による新たな成長をめざし始めたイオン北海道。25年のめざす姿に向けて変革は続く。

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