株主から再度“切り離し”迫られるイトーヨーカ堂、矢継ぎ早に進める事業構造改革の現在地
長らく続いた低迷からの反転攻勢を図る総合スーパー(GMS)各社の戦略をレポートする本連載。第2回では、イオンリテール(千葉県/井手武美社長)に次ぐGMS大手の一角、イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)の事業構造改革についてみていきたい。

“物言う株主”の提案にセブン&アイは……
セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイ)は2022年2月、米投資ファンドのバリューアクト・キャピタル(以下、バリューアクト)から、イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)の売却あるいは分離することを提案された。セブン&アイ株式の4.4%を保有するバリューアクトは、株主としての権利を行使し事業売却など経営改革を迫るアクティビスト(物言う株主)として知られる。
セブン&アイの事業には、コンビニエンスストア事業(国内・海外)、スーパーストア事業、百貨店・専門店事業、金融関連事業などがあるが、21年度連結営業利益の9割を占めるのがセブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)を中心とするコンビニ事業だ。イトーヨーカ堂や食品スーパーのヨークベニマル(福島県/真舟幸夫社長)から構成されるスーパーストア事業が占める割合はわずか4%程度にすぎない。
イトーヨーカ堂については過去にも投資ファンドから同様の提案を受けている。15年、米サード・ポイントから、業績不振の続くイトーヨーカ堂を切り離し、グループを牽引する中核のコンビニ事業に集中するように求められている。
バリューアクトの提案にはイトーヨーカ堂だけでなく百貨店のそごう・西武の売却完了もある。これについては、すでに米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループが優先交渉権を得たと報じられており、セブン&アイは事業の戦略的見直しを行なっているという。
一方、イトーヨーカ堂の売却提案について、セブン&アイは「イトーヨーカ堂を中心としたスーパーストア事業とセブン-イレブンが同一グループにあることこそがグループの成長に資する」とし、グループ内にとどめることを表明。目下、収益を改善するため事業構造改革に注力している。
イトーヨーカ堂、事業構造改革の現在地
イトーヨーカ堂の停滞は20年以上にわたる。2000年代に売上は1兆5000億円規模で頭打ちになり、1990年代半ばにピークを迎えていた営業利益も低落していった。2000年代後半には、不採算店舗の閉鎖や人員削減などのリストラが増えていくようになる。
現在取り組んでいる事業構造改革は15年に着手した改革の延長線上にある。この年、チェーンストア方式の運営を改め、店舗に仕入れや価格決定の権限を与え、店舗が独立して運営する方式に移行したほか、テナントミックスによる売場活性化、在庫削減、生鮮・総菜強化、不採算店舗の閉鎖などにも取り組み始めた。
19年には、スリム化による収益安定化をめざし、不採算店舗の閉鎖に引き続き取り組むほか、営業損失が続いていたライフスタイル事業(衣料・住関連)では、原則として自営は肌着・ヘルス&ビューティにとどめ衣料・服飾・住関連はテナント化、売場面積を18年度比50%に縮小する施策を打ち出した。
16年に公表したセブン&アイの中期経営計画では、19年度に営業利益150億円、営業利益率1.3%という数値目標を掲げた。この数値目標は未達に終わったが、店舗閉鎖や人員削減についてはほぼ計画通りに進んでいる。
店舗閉鎖については、2020年度までに30店舗を閉店し、小型スーパー・ディスカウントストア20店舗をセブン&アイ傘下の食品スーパー、ヨーク(東京都/大竹正人社長)に移管した。これにより総店舗数は182店舗(15年度末)から132店舗に減少した。
さらに21年度には4店舗を閉鎖。22年度は2店舗の閉鎖を予定するほか、16店舗の収益性を精査中だ。人員については20年度までに1000人、21年度に400人を削減しており、22年度には300人を削減する予定とする。累計で22年度末までに18年度比1700人を削減する計画だ。
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