鳥貴族、大倉忠司社長が語る「2年半の遅れ取り戻す」成長戦略とは

聞き手:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
構成:森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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トリキバーガー、出店拡大進める

──新しいタイプの店を準備しているそうですね。

大倉 店舗面積10坪程度の店です。社員独立制度を拡充する一環で開発、すでに直営の実験店で需要を調査しているところです。今期以降、小型フォーマットの拡大にエンジンがかかる見込みです。

──独立を志向する従業員が多いのですか

大倉 各店を巡回、店長と話をしていると「出身地に戻り、自分の店を持ちたい」「お客さまと近い距離感で接客できる店を経営したい」との意見が多く聞かれます。その声を受け、実現したものです。

 実は、従来も独立制度はあったのですが、店舗面積は40~50坪、投資額も数千万円と大きく、実際の独立者は年間1人程度しかいませんでした。新制度は、投資額も1200万~1400万円程度で済み、多くの志望者が出るはずです。

──一方、新規事業も立ち上げましたね。

大倉 21年8月、チキンバーガー専門店「TORIKI BURGER」(トリキバーガー)の1号店の大井町店(東京都)、22年3月には2号店、渋谷井の頭通り店(同)をオープンしました。

 コロナなどの感染症の影響を受けずに展開できる、新業態を確立するのがねらいです。現状2店の業績を分析して運営ノウハウを構築、直営、フランチャイズの両方で積極的に出店できる体制づくりを早期に固めます。

トリキバーガー渋谷井の頭通り店
トリキバーガーは24年7月期までに10~20店まで拡大する計画(写真は渋谷井の頭通り店)

──トリキバーガーは居酒屋と同様、国産食材を使用しているのが特徴。高品質、安全安心を訴求するという意味で居酒屋業態との相乗効果が生まれそうです。

大倉 もちろん期待しています。当社では16年から国産食材を使用していますが、実際に知っている方は全体の半数と限定的です。新規事業を機に認知度を上げたいと思います。

 トリキバーガーは24年7月期までに10~20店まで広げます。実現のため業態開発、新規出店にかかる総投資枠も20億円確保しています。

正社員の賃金を平均3.1%引き上げ

──燃料や原材料などの高騰が相次いでいます。コスト増を受け、御社も4月にフード、ドリンクを値上げしました。来店客の反応はいかがですか。

大倉 価格改定は4年半振りですが、前回に比べてお客さまにはスムーズに受け入れられ、好感触を得ています。ただ当社は値上げするだけでなく、社員の待遇改善にも力を入れる方針です。今年8月から、正社員の賃金を平均3.1%引き上げます。

 一方、各種業務や物流の効率化を進め、増えたコスト分を吸収するほか、生産性向上の努力を続けます。物流改革の分野では、従来、鶏肉の仕入れはベンダーを介していましたが、店舗へ直接納品する体制に移行させつつあります。現状、関東エリアの約半数の店舗で完了しています。中間流通をなくすことで、コストを抑えられるほか、短納期化により鮮度も向上、ロスも低減できます。

──今後の外食産業の見通しと、御社の成長戦略を教えてください。

大倉 二極化が進むでしょう。ミシュランガイドに掲載されるような高級店が支持される一方、低価格の大衆店も増えます。後者については競争が激化、再編は加速します。そのなか当社の成長戦略を描く際、海外市場への進出は必須です。

──いつから動きますか。

大倉 コロナ禍でストップしていた、海外進出計画を今年から再スタートさせます。2~3年後、アメリカで鳥貴族業態をオープンすることをイメージしています。アメリカを選択したのは、ビーフよりチキンの消費量が多いうえ、サプライチェーンを構築しやすい土壌があるからです。

 日本全国、さらに海外へも進出、世の中を明るくしていく「グローバルチキンフードカンパニー」となれるよう努力します。

鳥貴族ホールディングス企業概要

設立 1986年
資本金 14億9182万円
本社所在地 大阪府大阪市浪速区
売上高 155億9086万円(2021年7月期)
店舗数 616店舗(うち直営385店舗)*22年4月末時点
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聞き手

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

構成

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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