第37回 安易なコト消費の前に知っておきたい!これからの時代に「コトからモノへ」が大事な理由
「モノからコトへ」は、モノが売れないからコトへ活路を見いだすためのキャッチフレーズだ。しかし、ショッピングセンター(SC)や商業施設で「コトを売って儲かるのか」と誰しもが疑問抱いている。モノを売ることで、粗利益が得られ、それがSCにとっての賃料や手数料収入の原資となり、最終的にSC、テナント両者の利益へとつながる。今号では第34号で指摘した「モノからコトへを疑え」を一歩進めて利益と顧客満足へつながる「コトからモノへ」を提示したい。

なぜ今、モノが売れないのか
今、モノが売れなくなったと感じるのは、
- これまで売れていたモノが売れなくなったこと
- これまでとは売れる場所(チャネル)が変わったこと
この2つに尽きる。
それにも関わらず、これまでと同じことを毎年繰り返している。年明けは福袋にセール、その後は春物、夏物、秋物、冬物、季節の変わり目と立ち上がり、秋色夏物、今年のコーデ、着回し術、SS(春夏)にFW(秋冬)…… 事業視点で回してきたシーズンごとの商品政策(MD)や販促が気候変動で通用しなくなっている。
そして、過去、買い物の場所といえば総合スーパー(GMS)と百貨店から始まり、その後はファッションビル、モール、駅ビル、駅ナカ、そしてアウトレットセンターと小売機能を不動産賃貸業で提供するSCが増加していった。2000年代に入り広がった3G・4Gによってネット技術が加速し、消費者の情報入手経路もマスメディアからSNSへと移る。そして2020年、コロナ襲来で消費者の価値観や生活態度に対応したECが急拡大する。
この環境下、各既存チャネル(商売や場所)の市場規模は当然縮小する。これまでの経験とやり方に固執すればするほど、苦労は増大していく。
東日本大震災の後、「スーパークールビス」が登場したことは記憶に新しい。スーツ、ネクタイ、革靴の市場が縮小したように、社会環境の変化や新技術の誕生により、それまで売れていたものが途端に売れなくなることは常に起こる。レコード針や使い捨てカメラがその例だろう。
この2年、コロナによって在宅ワークが浸透したことにより、外出に必要な商品やサービスが低迷し、インバウンド客目当ての商売は先の見えないトンネルの中だ。その一方で人口も減少しているのだから、「売れない売れない」と嘆きたくなるのも仕方の無いことかもしれない。
では、どうすれば良いのか。そこで出てくるアイディアが、「モノからコトへ」、ではなくその逆、「コトからモノへ」である。
ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営 の新着記事
-
2025/06/13
第116回 SC生き残りの鍵は「リピート率」! これからの時代の集客戦略とは -
2025/05/30
第115回 「売ったらおしまい」にあらず!モノが売れない時代に改めて考えたいSCの役割 -
2025/05/16
第114回 SCのテナントミックスは“生態系” リニューアルで気をつけるべきポイントは -
2025/05/02
第113回 SCとは、”商業テナント縛りの不動産賃貸業”である -
2025/04/18
第112回 2025年、装置産業としてSCが取り掛かるべきこととは -
2025/04/04
第111回 ショッピングセンターの減少と小型化が進む理由とは
この連載の一覧はこちら [116記事]

関連記事ランキング
- 2025-06-13第116回 SC生き残りの鍵は「リピート率」! これからの時代の集客戦略とは
- 2025-05-29テナント賃料は高いのか安いのか、不動産から考えるアパレルチェーンの出店戦略
- 2025-04-18第112回 2025年、装置産業としてSCが取り掛かるべきこととは
- 2022-12-05第59回 アフターコロナを勝ち抜くSCに必要な「テナントリーシング力」とは
- 2023-02-24第64回 このままでは縮小待ったなし!SC事業の第3の収益源とは
- 2023-08-02第75回小さいからこそ、ショッピングセンター愛が満載!いま、「単館SC」が強い理由
- 2025-02-18SC開発に大異変!今年の国内新設数は史上最低の水準へ
- 2019-12-12JR西日本、大阪駅西側に大型複合ビル、オフィスや商業施設など24年竣工
- 2020-02-17オリックス、「クロスゲート金沢」の商業施設テナントを発表、食を中心に34店舗
- 2020-06-26ノジマ、伊勢丹府中店跡に大型商業施設、来春オープン予定