第74回ショッピングセンターは買い物以外の価値をどうつくるか?

西山貴仁(株式会社SC&パートナーズ 代表取締役)
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モノからコトへと言われて久しい。しかし、このコトの先には必ずモノがある。もちろん、時間消費、体験消費など物質的なものが介在しない消費活動は多々存在する。しかし、多くの局面で「モノ」は必ず介在する。このメカニズムを理解しないまま「コト消費」という言葉に踊らされ、ワークショップのイベントを開催するショッピングセンター(SC)やそのテナントが後を絶たない。イベント自体は悪いことではない。でも、そこからどうやって儲けるのか。今回は、「モノからコトへ」をモノ消費につなげることを考えたい。

Peera_Sathawirawong/istock
Peera_Sathawirawong/istock

「モノからコトへ」の誤解

 モノが売れない時代と言われる。でも、そうだろうか。新聞紙上には過去最高売上や最高益の見出しが躍る。ではSCからは「なぜ売れない」という嘆きが多く聞かれるのか。答えは簡単だ。顧客ニーズに合わないモノが売られているからで、店頭に並んでいるモノがECで手に入るものばかりだからだ。だからわざわざ出掛けていく意味を見出せない。

図表 消費支出の推移
図表 消費支出の推移

 ところがSC事業者はこの「売れない」現象を曲解して、「今の時代は“モノからコトへ”だ!」とばかりに単純にイベントやサービスを繰り出すことに終始している。でも、ワークショップのイベントも子供のプレイルームもカルチャーセンターもゲームセンターもシネコンも料理教室もSCには昔からあったはずだ。実際にコト消費が伸びているデータは無い(図表1)。実は、単に洋服が売れなくなっているだけのことなのである。

「モノからコトへ」の本当の意味

 このモノからコトへと似たようなキャッチコピーに「モノを売らずにコトを売れ」がある。実はこのキャッチコピーの本質はコト消費を促すことによってモノ消費を見直すことを迫っている。モノはコトがあって初めて売れるもの。スポーツにはスポーツ用品が必要となり、スポーツをすればドリンクも欲しくなり、出掛けるにはバッグも必要になり、旅行とセットになれば多くの旅行用品が必要になる。要するにコトを促すことで必要な「モノ」は必ず発生する。それを無視して、ひたすら店頭に洋服を並べるだけでは売れるはずもない

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