第73回リアル店舗の役割変化!ショッピングセンターが受け止めるべき現実とは
ビジネスの価値を決めるのは他でもない顧客である。ビジネスによってその顧客は変わるが、需要者がいない限り供給は成り立たない。小売の場合は、売上の低下という現実が如実に現れ、変化を迫られ、その変化に対応できなければ市場から退出せざるを得ない。需要とは常に社会環境を背景に形成される。では、ショッピングセンター(SC)は変わる需要に対応しているのかについて、今回は考えたい。

時代とニーズの変化で、変わるSCの役割
高度成長期、人口の増加と都市化が進み、人口の集中によりニュータウン建設が加速した。その結果、モータリゼーションの発達と住宅の郊外化によりマーケティングそのものが大きく変わった。消費者は、可処分所得の増加と生活レベルの向上から被服履物への関心も大いに高まり、これらニーズに応えた結果がSC業態の変遷に現れている。
この時代に呼応したGMS(ゼネラルマーチャンダイズストア)がテナントを導入しSCの黎明期を迎え、その後、都市化による街の発展によって若者が集まるファッションビルが全盛時代を迎える。
一方、日本の都市圏では、鉄道を中心とした街づくりが進み、ターミナル型百貨店が登場、駅には駅ビルや「エキナカ」が誕生する。
この消費者の流動を前提に作られた商業施設がコロナ禍で最も影響を受けたわけだが、今後も「トランジット(立ち寄り)型」SCの強みは低下するとはいえ、他の立地に比べればその地位は揺るがないだろう。
SCの業態は、この他、店舗面積・商圏規模で分類したネイバーフット型SC(NSC)、コミュニティ型SC(CSC)、リージョナル型SC(RSC)、スーパーリージョナル型SC(SRSC)があるが、どのような分類にしても、すべてはモノを流す器だったのである。
小売業と不動産業の融合
モノを生産者から消費者に流すためには何らかの媒介機能が必要となる。それが卸売業であり、小売業であり、モノを川上から川下へ流す上でそれぞれが役割を持っている。
当然、小売が最も消費者に近く直接商品を手渡す役割を持つが、ここで必要になったのが店舗であり、その集積体がSCへと進化する。
この段階で、小売とは全く異質な不動産業が介在することになる。それが建物賃貸借契約による店舗形態であり、この形態がエンドユーザーへ商品を受け渡す場所として小売である百貨店をしのぐまでに成長した器がSCだったのである。
言うなればSCとは、「不動産賃貸を使って消費者にモノを届ける仕組み」である。
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