落語家・立川志ら乃のスーパーマーケット徒然草   第8回 上野の「業務スーパー」で打ち上げ!

2020/03/13 05:43
立川志ら乃(落語家)

スーパーを愛してやまない落語家・立川志ら乃の「スーパーマーケット徒然草」。「上野広小路亭」での寄席の後に例の”スーパー打ち上げ”を「業務スーパー」で敢行した志ら乃師匠。前座を務めた後輩落語家が意外にも「業務スーパー通」であったことに軽く嫉妬しつつも、それまで少し見くびっていたところのある業務スーパーの威力を体感することに――。

前座の落語家の生命を守る「業務スーパー」

立川志ら乃
真打とはいえ、いろいろ苦労しているのです

 落語立川流が毎月合計12回独自開催している「一門会」の運営を、数年前から私一人で行っております。他の落語団体と違い、補助金的なものが一切ない状態での運営。もちろん私はほぼボランティア。このサイトを見ている経営者の方々がその内情を見たら「どんなブラック企業なんだ」とビックリされるかもしれませんが、結果的に私にとって人生の修行をし直す、いいきっかけになってます。

  前任者から引き継ぐ際、

 「私が運営を担当してお客が増えたら、立川流の中での立ち位置も随分よくなるぞ」とか、

 「『立川流を超V字回復させた男』として新書を発売し、『カンブリア宮殿』とかにも出たりして」

 みたいな夢と希望を胸に秘めておりましたが、自分自身の能力の低さを嫌というほど味わされるのに時間は掛かりませんでした。裏方的な細かい仕事ができない性格。40代半ばで自分の弱点と向き合う日々が続き、思わず下の人たちに「どうしてちゃんと理解して動いてくれないんだ!」と怒鳴ってしまうこともしばしば。

 しかしそんなことを何回か繰り返すうちに、「私は何をどうしたいんだ?」を強く考えるようになり、現在行われている一門会を大きくするのではなく、「次の代へつなげていくシステムの構築」と「その都度状況に合わせてどうにか生き残っていくための戦略」を考える、というところに行き着きました。

  詳しく書くと長くなるので端折りますが、われわれ立川流はいわゆる「寄席」のシステムが確立されておりませんので、日々手探りで「立川流の寄席」を運営しています。 そういう状況で一番大事なのが、下の人――われわれの世界では「前座」と呼ばれる人たちに一生懸命働いてもらわないといけない、ということに気がつきました。

  師匠や先輩から毎日のように小言を食わされることが仕事と言ってもいい前座修行期間。それに耐えるための気持ちも大事ですが、身体も大事。基本的に貧乏生活を送っている前座さんたちは食事に事欠きます。

上野広小路亭。いつもは御徒町の「吉池」に行くが…
上野広小路亭。いつもは御徒町の「吉池」に行くが…

  ある日、上野広小路亭での夜席終演後、楽屋にいた前座さんたちに

 「最近さぁ、スーパー打ち上げっていうのをやっててね…」

  とスーパー打ち上げについて恐る恐る切り出しました。なぜ恐る恐るかというと、夜席終演後だと私が大好きな御徒町の「吉池」が閉まっており、選択肢が「業務スーパー」一択になってしまうからです。 

 本当にこういう書き方で申し訳ないのですが、私の人生の中で「少し高くても、いいものを少量」というフェーズに入ってきたところなので、どうしても大特価・大容量が前面に出る「業務スーパー」をどこか見くびっていたところがあるのです。しかも実際に通ってほかのスーパーと比べたうえでの話はなく、ただの印象のみでの見下しという最低のやつです。

  「でね、スーパーに行くっていっても、業務スーパーなんだけど…」

 と具体名を出すと、それを聞いていた前座の立川縄四楼の表情が急に明るくなったので、

 「なんでそんなに嬉しそうな顔をしたんだ」

 と聞くと、

  「業務スーパー、めちゃくちゃ行ってます!」と。

  ここで「ハッ!」としました。業務スーパーのターゲット層として落語家の前座はドンピシャであることになぜ気が付かなかったのか。私も前座の頃、初台の不動通り商店街にあった「つるかめ」()というディスカウントスーパーでとにかく安い米、特売の日のみ購入する卵で命を繋いでいたではないか。

※「つるかめ」…テスコジャパンが関東エリアで展開していたディスカウントスーパー。テスコの日本撤退・イオンによる同社買収により、その後「マックスバリュ」「アコレ」「まいばすけっと」などに転換された。

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