情シスの役割は「ボランチ」!?DXを進めるために必要なこととは?
すべて内製化は不可能、企画を内製化する
次にシステムについてだが、カギになるのが“システム内製化”だ。
今までITベンダーに盲目的に巨額な投資を続けてきた大企業でも、システムの内製化に強い関心をもつようになっている。
「新規システムの開発に数年もかかる従来の方式では、できあがったときには“時代遅れ”“時代錯誤”になる。自前でエンジニアをどんどん確保しないと変化に対応できない」と語る経営者も少なくない。
しかし野原氏が重要視する“システム内製化”は、よく言われるような内製開発のこととイコールではない。
「なんでもかんでも、すべてを内製開発することではない。あくまでもシステム企画の内製化。自分たちがリードしてシステムの開発を進めていくが、開発そのものはベンダーを併用するという考え方だ」(同)
ではシステム企画とは具体的に何をすることか。
たとえば事業部門から「これもシステム化したい」と言われたときに、「いや、それ、システム化する必要ないよね」「その業務、もうやめてしまっていいんじゃないか」「(わざわざシステムにするよりも)業務のやり方で変えればいいのでは」とか、「言われたとおりに全部つくると10億円かかる」「もし5000万円でやるということなら、こういうところを割り切ってくれないか」といった話ができるというイメージだ。
言い方を変えると、「“ やりたいこと”と“やれること”の調整」をするのがシステム企画だ。
事業部から「在庫情報は正確にしたい」「価格情報を全部」「在庫ナシ連絡はシステムで」といった要件定義があがってきたときに、さまざまな制約条件を踏まえてそれぞれ「システム制約で1時間バッチ」「予算制約で標準価格のみ表示」「まず人的対応」に調整をすることだ。
サイクルを回す人材が必要
組織を変え、システム開発へのアプローチも変えた。果たしてそれでDXが推進され、経済産業省が意図する競争優位の確立につながっていくのだろうか。
答えは「否」だ。
変革をした組織、システム開発をきっちり回していく人材が必要になるからだ。DX人材とでも呼べばいいのだろうか。
こうした場合、業務やビジネスのことをよく知る人材がいいのか、それともシステムを理解する人材がいいのか、ということで議論になることが多い。
しかし、ことDX人材に関しては、明らかにシステムをよく知る人材でなければならない。野原氏はそう断言する。
それは、これからのビジネスの起点になるEC、CRMなどの顧客接点はシステムがベースにあるものだからという。いまや、従来のように、既存のビジネススタイルを無理やりシステムに落とすという時代ではないからだ。
野原氏が理想とするDX人材はどういう人か。
「ビジネス・業務・システムの中心に立ち、デジタルで利益を上げるサイクルを回すことができる人材」(同)
ビジネスデザイナー(ビジネスでどう利益をあげるかを考える)でありながら、プロダクトオーナー(システム仕様を策定する)になりながら、プロジェクトマネジャー(システム開発を成功させる)になることができる人材だという。