2019/03/14

【レポート】カインズ設立30周年記念セミナー 経営トップがこれからのカインズを語る!


競争激化するホームセンター業界で生き残るためのカギは?

市場規模が伸び悩むなか、ホームセンター業界の競争は激しくなる一方だ。こうした状況の中、成長を続けるためには、どのようなことが必要となるのだろうか。ダイヤモンド・リテイルメディアは2019年2月20日、株式会社カインズの創立30周年記念セミナーを開催。土屋裕雅代表取締役社長(講演時、現:代表取締役会長)が「これからのカインズ」をテーマに講演した。


主催:株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

協賛:サンスター株式会社、大日本除虫菊株式会社、ハスクバーナ・ゼノア株式会社、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社、株式会社ベッセル、UCC上島珈琲株式会社、レック株式会社(五十音順)


カインズ土屋裕雅氏

【講演】

 (株)カインズ 代表取締役社長 土屋 裕雅氏
 (現:代表取締役会長)

 

「次の30年 カインズが進む道」

ふだんの暮らしに求められる
新たな価値を創造する

 

カインズ設立30周年記念セミナー会場の様子

■ホームセンターのスタートは大型化とロープライスに焦点

 

 現在のベイシアグループは、もともと1958年(昭和33年)に開業したいせやが起源であり、その後スーパーマーケットはベイシア、作業着はワークマン、雑貨を扱うホームセンターはカインズというかたちで成長してきた。そのため、それぞれの会社は親子関係ではなく兄弟会社という位置づけになっている。1989年にはカインズがいせやから分離・独立したので今年で設立30周年になるが、カインズの前身である「いせやホームセンター栃木店」が1978年に開店しているので、ホームセンター事業自体は約40年前から展開している。

 

 当時はホームセンターという業態が明確になっていたわけではなく、なんとなく衣料品や食料品以外の雑貨を扱う業態がホームセンターと呼ばれていた。規模を追求するなかで1994年には「スーパーホームセンター伊勢崎店」をオープン。オープン時には、店舗の近隣が渋滞する騒ぎとなった。このスーパーホームセンターは、海外で言うところのホームインプルーブメントセンターを指向していた。現在では1万㎡以上をスーパーホームセンターと呼んでいるが、当時の伊勢崎店は売場面積7000㎡であり、そのくらいの規模をスーパーホームセンターとしていた。開店から「ロープライス保証」も掲げた。ロープライス保証を謳った商品が、万一、他店でより安く販売されていたらその差額の1.5倍割り引いて販売するという仕組みだ。これに象徴されるように、大型化とロープライス化がカインズだけでなくホームセンター全般のビジネスモデルだった。

 

カインズ設立30周年記念セミナー【図1】ベイシアグループを構成する企業
ベイシアグループを構成する企業

■競争に勝ち抜くために違う“武器”が必要

 

 ホームセンター業界では、90年代後半にかけてを“黄金の10年”という人もいる。しかし大型化とロープライス化で競争は激しく、振り返ってみれば“血みどろの10年”と言うべき状況だった。大型化とロープライスだけでは優位性が薄らいできた。そこでなんとか競争に勝ち抜くために違う“武器”を持とうと、その後も農家向けに農業資材に特化した店やオリジナル商品だけを扱う店、ペット関連だけの店も出店したことがあるが、そのほとんどが失敗に終わった。いっぽうで2000年には海外商品事業部を新設し海外からの仕入れを開始した。

 

 2002年3月に社長就任したが、その年の5月には後にDCMホールディングスとなるカーマとダイキの資本業務提携、その翌年にはホーマックを加えた3社提携がスタートした。それまで売上トップだったカインズだが、3社統合の出現でトップを明け渡すことになった。それはそれでショックだったが、よくよく考えてみれば、統合により大きくはなったが市場自体が変わったわけではない、むしろトップを追う位置になったことでチャレンジしていこうという意識が強くなった。

 

カインズ設立30周年記念セミナー【図2】カインズの売上と経常利益の推移
カインズの売上と経常利益の推移

■カインズにしかないものを創る「SPA宣言」

 

 チャレンジャーとしてカインズらしさを前面に押し出して、海外からの調達商品でもオリジナル商品でもカインズにしかない商品を開発し、販売しようと決意した。2007年にはスーパーホームセンター伊勢崎店を移転、リニューアルオープンした際に開いた、その記者発表の席で「SPA宣言」し、方向性を明確に打ち出した。

 

 2012年には本社を高崎市から埼玉県本庄市に移転した。その前後で全国各地に物流センターも相次ぎ設置した。2015年6月にはロンドンで開かれた「第3回グローバルDIYサミット」においてスピーチを行った。そこで私は「DIYを何かを作る・創ることと広義にとらえ、壁の塗り方から燻製づくりまで多くのプログラムを実施している」ことを紹介し、「その拡大解釈が生活の質の向上というニーズへの対応につながると考えている」とスピーチを結んだ。

 

 その間も、不良品や欠品が出たり、売れずに商品が滞留したりして社内では不評を買ったこともある。しかし、ふだんの暮らしに近いもの、生活者の市場に向けて必要だから商品を開発するという信念を持って取り組んできたつもりだ。DIYを「何かを作る・創る」というように拡大解釈すれば、生活に必要なものを開発することもDIYである、と考えた。そういう考えがきっかけとなって、もっと商品の幅を広げていきたいと思うようになった。

 

■「IT企業宣言」で積極的なIT活用を表明

 

 今後の30年を考えた時、SPAを強みとして、カインズにしかないものをさらに拡大することが大切だと考えている。その一環として2018年9月には、新しい暮らしのかたちを提案する「スタイルファクトリー」を「ららぽーと名古屋みなとアクルス」内にオープンした。「毎日の暮らしを自分らしくしたい」というニーズに応えるために、自分なりのアレンジを加えてもらうための工具やパーツ、それを使うためのワークスペースを用意し、アドバイスするスタッフも配置した。ここではカフェも併設して、隣でコーヒーを楽しめるようにしてある。実験店的な要素もあるが、これまでにはないまったく新しい業態の店舗となっている。

 

 また、2018年1月には「IT企業宣言」も行った。「SPA宣言」もそうだが、何かにつけて「~宣言」というのもカインズの特徴。「宣言」することで、責任も生まれるし意識をひとつにして進むことができる。ITをビジネスに活用するのは当然だが、より先進的なITを使いこなすことでより強い企業にしたい。「SPA宣言」や「DIYの拡大解釈」に拍車をかけていくためにもデジタルトランスフォーメーションは重要だ。カインズはこれまでと変わらずに、未来志向のチャレンジャーであり続けたいと考えている。

 

関連記事を読む

© 2019 by Diamond Retail Media