生鮮総菜、PC超活用に本物のSPA化!「総菜の独自化」最前線

文:雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)、松岡 瑛理
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「総菜のSPA化」という新たな潮流

 総菜のトレンドとしてもう1つ注目したいのが「総菜のSPA(製造小売)化」ともいえる動きだ。もともとSMの総菜は自社製造がメーンではあるものの、実態としては食品メーカーや卸などからの商品供給やメニュー提案に依拠するところも多かった。それでは真の差別化は図れず、より上流に遡る動きが本格化してきた。

 たとえばイズミ(広島県/山西泰明社長)は、食品メーカーや卸などを介さず、商品の企画から製造、販売までを自社で一貫して行う新総菜ブランド「zehi」を22年に導入。23年4月には高付加価値・旬・健康・トレンドをそれぞれ打ち出す4つの新シリーズも投入し、完全自社ブランドならではの独自性の高いアイテムを次々と開発している。

 SPA化の文脈でさらにユニークな取り組みを行っているのが、静岡県浜松市を本拠に総菜チェーン「知久屋」を運営する知久(知久利克社長)だ。同社は化学調味料や合成着色料など添加物を使わない総菜の販売をコンセプトとしており、品質を担保するために製造工場の運営、配送、販売などをすべて自前化。さらに総菜メニューの素材となる大根やジャガイモなどの自社栽培まで手掛け、まさに川上から川下までを一気通貫でカバーしている。

 ここまで見てきたように、総菜をいかに進化させるかという方向性や考え方は各社各様である。ただし共通するのは、総菜において自社の強みをどう打ち出していくか、そのためにどのように独自性を追求していくのかという、戦略の方向性が明確な点である。

 価格と価値の両立は大前提として、自社の総菜で圧倒的な差別化を図るために何をすべきなのか。そこで注視するのは競合他社の動きではなく、あくまで「自社の強み」なのだ。「あの店でこんな商品が売っていたからベンチマークせよ!」といった単品レベルのモノマネに終始していては、“総菜革命”は成し遂げられない。

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雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。

企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)済み。

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