ミズノの睡眠市場参入で注目はファッション性×寝具の親和性 「ユニクロホーム」の可能性とは
寝具ビジネスはファッション性の訴求が肝心
実は、日本でも多角化による寝具事業で成功した事例はある。まず、昨年、2000億円という莫大な値付けで話題をさらったマッシュスタイルホールディングスのgelato pique(ジェラート・ピケ)だ。ジェラート・ピケは、セグメント的にはホームウエアなのだが、独特のフェミニンな世界観をもっており唯一無二といえる。
また、存在感といえば、無印良品も寝具カテゴリーで確かな存在感を持つ。無印良品の寝具は確かに機能性に優れている気がする、が、あれだけ幅広いMDを展開している同社に寝具に集中投下する資金はそれほどないはずだ。しかし、私が過去行った調査によれば、寝具と言えば必ず同社の商品がでてきて、その理由は、「無印の商品であれば周りとのコーディネートにマッチするから」ということだった。無印の厳しい「ブランドコード」については、拙著『ブランドで競争する技術』をお読みいただければと思うが、素材感を打ち出し、非常に独特の生活感を感じさせる、こちらも唯一無二のブランドだ。
最後に、こうした考察を踏まえた私の意見を述べると、機能性訴求による一点開発は、専業メーカーに軍配があがる。彼らの脇から市場シェアを奪おうとするなら、機能性ではなく、他の商品との世界観の一貫性で独自性を出すのが良いのではないか、ということになる。
さて、これは私のような職業の人間がよく使う「初期仮説」の段階で、もちろん検証が必要ではあるが、ミズノのような大企業の新規事業が10億円規模なのであれば、それはトライアルであることは間違いない。同社の株価も日本株全体のトレンドに押されてか、続伸しているという。何もしないままあれこれ考えるより、スモールスタートでトライアンドエラーを繰り返し軌道修正してゆくのだろう。それも正しいやり方だ。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
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