2022年、株価が10%以上上昇/下落した小売業と2023年に注目すべき3つのテーマとは
あけましておめでとうございます。本年も昨年同様、どうぞよろしくお願いいたします。今回は、2022年に株価が大きく伸びた企業、逆に大きく下がった企業について名前を挙げその要因について説明するとともに、2023年の小売業を取り巻く、注目すべき3つのテーマについて解説したいと思います。

2022年は小売“株”にとって良い年だった
2022年の株価動向を簡単に振り返ると、東証株価指数が▲4%下落したなかで、小売株指数は+9%上昇していて、小売“株”にとって実は良い一年でした。
事業環境は概ね逆風だったと思います。所得よりも物価の上昇が厳しく実質所得の目減りが続き、移動制限が緩和されモノからコトへ消費対象が広がり、さらに光熱費の上昇が事業者の利益率を圧迫しています。
株式市場の動きはこの観点から見ると少し理解しかねるように思えます。
しかし、一度、個別企業レベルで眺めて見ると、腑に落ちやすくなります。
なぜなら、時価総額の大きい企業ほど、先に述べたようなマイナス要因を打ち返す材料があったため、総じて株価が上がったからです。
2022年、10%以上株価が上昇/下落した小売業とは
2022年に株価が10%以上上昇した企業を時価総額の大きいものから列挙すると、ファーストリテイリング+23%、セブン&アイ・ホールディングス+12%、パン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングス+55%、マツキヨココカラ&カンパニー+55%、エービーシー・マート+52%、三越伊勢丹ホールディングス+69%、ゼンショーホールディングス+22%、しまむら+36%、サンドラッグ+30%、ヤマダホールディングス+19%、髙島屋+72%、J.フロント リテイリング+15%、日本瓦斯+37% となります。
以上、13社の中で、
株式市場は、次の点をプラス評価したと考えられます。
- 北米収益の貢献(ファーストリテイリング、セブン&アイ)
- 事業の集約(セブン&アイ)
- M&A効果発現期待(マツキヨ、ヤマダ)
- 行動制限解除後のリベンジ消費(百貨店、エービーシーマート)
- 節約志向の取り込み奏効(パン・パシフィック、しまむら)
他方、株価が10%以上下落した主要企業は、MonotaRO、ウエルシアホールディングス、コスモス薬品、良品計画、スギホールディングス、FOOD & LIFE COMPANY、セリア などになります。
株式市場は次の点をネガティブ評価したと考えられます。
- コロナ禍特需の一巡(ドラッグストア)
- 原価上昇(良品計画、FOOD & LIFE、セリア)
- 金利上昇・リスクプレミアムの上昇(MonotaRO)
総じて見ると、コロナ禍からアフター・コロナ禍への移行期で追い風と向かい風が入れ替わったため株価もそれに応じて変動したケースが散見されます。しかし、こうした風向きの変化だけにとどまらず、海外・M&A・商品戦略の進化などの新しい評価軸を株式市場に提示した企業も多数にのぼり、それが高い評価につながったと筆者は理解しています。
1 2
椎名則夫の株式市場縦横無尽 の新着記事
-
2025/01/10
24年もっとも上昇/下落した小売株上位20!25年の小売株、4つの注目点とは -
2024/12/16
VAIO買収のノジマ M&A巧者の成長戦略と10年で株価6倍の理由 -
2024/09/24
クシュタール買収提案でセブン&アイがいますぐすべきことと3つのシナリオとは -
2024/08/19
円安修正で国内成長力に再注目!良品計画に広がるチャンスと課題とは -
2024/07/08
アインHD、フランフラン買収で変わる?株主総会の争点とは -
2024/06/07
連続増収増益途切れ、株価下落のニトリHDの意外な実態と今後
この連載の一覧はこちら [62記事]

ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2024-03-22年間の視聴者数1000万人突破! ユニクロのライブコマースが好調な理由
- 2021-11-16「ラルフローレン」と「ユニクロ」が同じである理由とZ世代に対する誤解が生む悲劇
- 2024-02-21ファストリ業績絶好調も…日本の大衆から乖離するユニクロはどこへ行く?
- 2023-09-19ユニクロ柳井正会長が「世界は可能性に満ちている」と語る真意
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2024-09-10アパレルのいまを全解説!GU、しまむらとシーインを比較してはいけない理由
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2022-10-31ファストリ、ニューヨークにも「世界本部」設置で、推進するグローカル戦略とは
- 2023-08-07事業そのものをサステナブルに ユニクロのマーチャンダイザーが希望した異動先
関連記事ランキング
- 2025-01-23低価格が浸透!コスモス薬品、25年5月期上期決算は増収2ケタ増益
- 2025-01-23売上高2兆円超のドラッグストアグループが誕生へ=2024年の小売業を振り返る
- 2022-08-29アークランズ誕生でビバホームが消滅へ……吸収合併が意味するところとは
- 2025-01-24ホームセンター月次実績=2024年12月度
- 2020-12-08コスモス薬品、ゲンキー、クスリのアオキ 日本全国で暴れ回るフード&ドラッグ3社の戦略と実力、影響を徹底解説!
- 2024-09-25市場規模拡大、寡占化進行!小売業12業態、最新市場規模&占有率2024
- 2025-01-27ドラッグストア業界のDXの現況は?前編 注目技術のトップは生成AI
- 2020-02-07ホームセンター業界最大手!DCMは社長交代でどう変わるのか?
- 2024-01-11クスリのアオキHDがM&Aを加速! ついに四国にも進出へ
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは