サブカルの聖地・まんだらけ コロナ禍でEC売上激増、取引価格高騰の意外な理由

取材・文:若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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EC強化が成功、海外需要も取り込む

 まんだらけの精神が不変である一方、コロナ禍で変化があったこともある。その一つがECだ。それまでは順調に右肩上がりでの売上成長を見せていたまんだらけだが、コロナ禍でインバウンドが消失、国内の人の動きも鈍くなった結果、20年9月期決算では売上高が90億1700万円と対前年比で10.3%減少、営業利益は2億5700万円で同71.1%の減少となった(図表)。厳しい状況下で経営陣が下した判断は、「売上が上がらなくても買い取りを続ける、やるからには徹底的にやる」というものだった。これは、コロナ禍にあっても事業を拡張する、というメッセージで、「普通とは違うこと」を追求する古川イズムの体現でもあった。これを受けてEC部門を拡張し、販売と同時に宅配買い取りも強化。結果としてこの方向性は成功を収めた。徐々に国内の客足が回復してきたこともあり、最新の21年9月期第3四半期決算では、売上高前年同期比8.8%増、営業利益は248.5%増と大きな回復を見せている。

図表●過去5年間の売上高の推移と今期予想

 ECの好調には海外需要の増加も関与している。サブカル領域の中古品は、昨年頃から取引価格が急上昇。以前は50万円程度が相場だったセル画が、今では300~500万円で取引されるほどの急騰ぶりで、これはサブカル商品が海外勢を中心に半ば金融商品化しており、投資目的での購入が増加していることが要因だという。ほかのジャンルでは現代アートなども投資の対象となることがあるが、「自身から見て価値のわかりにくいものに投資するよりも、本物の宮崎駿の原画に800万円出した方がよい、そう考える層が増えている」(辻中社長)。最近の傾向として、とくに20代などの若い世代でこういった考えを持つ人々が増えているのが特徴のひとつだ。

 このような動きは世界中にあり、売上に占めるECの割合は30%から50%まで上昇。千葉県香取市にある流通センター「まんだらけSAHRA」の取り扱い額も、以前の6000~7000万円から倍増した。コロナ禍で国内のEC需要も高まっているものの、その売上を海外が凌ぐ月もあるという。

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