サブカルの聖地・まんだらけ コロナ禍でEC売上激増、取引価格高騰の意外な理由

取材・文:若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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まんだらけを支える精神“古川イズム”とは

ビンテージやアンティークのおもちゃを取り扱う飛び地店舗の一つ、「まんだらけ 変や」
ビンテージやアンティークのおもちゃを取り扱う飛び地店舗の一つ、「まんだらけ 変や」。特定のジャンルの小規模店舗出店に際しては、数年かけて商品を買い集めるという

 とはいえ、POSデータが存在しないものや、同じ商品でも状態が異なるものなど、個別に鑑定が必要になってくる商品もまんだらけには日々持ち込まれる。そんな時活躍するのが、まんだらけの資産ともいうべき鑑定人たちだ。彼らのほとんどはもともと特定のジャンルにのめり込むほど強い興味を持っており、趣味が高じて鑑定人になった人々だ。さらにまんだらけでは、鑑定人以外のスタッフにも特定のジャンルのマニアが多いという。彼らはなぜ、ほかのサブカルショップではなくまんだらけを選んだのだろうか。そこには、20年12月に会長に退いた古川益三前社長の、“ 古川イズム”とでもいうべき独特の思想がある。

 古川氏の考えは次のようなものだ。「ただ売れ筋を並べただけの店なら誰でも作れる。スタッフ自身が良いと思うもの、やりたいと思うこと、普通とは違うこと、そういうものを徹底的に追求する」(辻中社長)。具体例を挙げると、「2年後に売れると思うものを前面にアピールする」「スタッフ自身が売りたい、えこ贔屓したいものを押し出す」といったことだ。こういった店づくりのためには、マニア自身の“好き”や強い熱意が必要不可欠で、それこそがまんだらけが求めているものなのだ。

「まんだらけ SP7(ソフビ専門店)」
各専門店の店内には、海外の作家による一点ものや、プレミアがついている商品など、ほかでは手に入らないものも多く並ぶ(写真は「まんだらけ SP7(ソフビ専門店)」)

 スタッフであると同時に、1人のマニアとしてのこだわりが尊重される社風に惹かれて集まったスタッフは今や870名(役員・社員・パート・アルバイト含む)にもおよぶ。業界としては珍しく社歴の長いスタッフが多く、今会社の中心となっているのは15~20年目の社員だ。社長交代からもうすぐ1年。会長に退いてから古川氏が表立って指揮を執ることは少なくなったが、古川イズムはまんだらけそのものといっても過言ではないほど現場に浸透しているという。

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