アパレル業界 待ったなしのSDGs対応とリスクまみれの産業政策
地球温暖化で8000万人死亡・経済損失2兆円!!
8月19日 環境省など関係行政機関が、ジャパンサステナブルファッションアライアンスを創設したことを発表した。本アライアンスには、伊藤忠商事、帝人フロンティア、豊島など商社、アダストリア、ゴールドウイン、ユナイテッドアローズなどのアパレル小売、倉敷紡績、東レなどの素材メーカなど11社が参加。適量生産、適量購入、循環利用によるファッションロスゼロ、および、2050年カーボンニュートラルゼロを目指すサステナブルファッションへの移行を推進するという。同団体によれば、ファッション産業はCO2排出、水質汚染、自然環境への悪影響が指摘されており、もはや単独企業の努力でこの目標を達成できる以上に事態は深刻になっており、大量生産、大量消費、大量破棄から脱却しなければならないということだ。
時を同じくし、8月9日の日本経済新聞に衝撃的な報道がなされていた。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、世界の気温上昇が2021~40年に1.5度に達し18年の想定より10年ほど早くなるという報告をした。さらに、化石燃料への依存が続く最悪の場合、41~60年に2.4度、81~2100年に4.4度となる。
IPCCの報告書では、この1.5度の気温上昇は我々人類の影響によるものと断定。すでに、その影響は、カリフォルニア、ロシア、トルコなどで頻発する山火事などの形で出ており、地中ガスの放出により細菌が地上に巻かれる可能性もあるという。さらに、気温上昇に伴う熱波による死者数もすでに増加している。2000年から2018年にかけて65歳以上の人が暑さの影響で死亡する確率は55%増加した。
国際労働機関(ILO)は、フルタイムで働く8000万人分の労働力を「熱ストレス」で2030年までに失うと分析し、世界規模で経済損失は2兆4000億ドルに及ぶとのことだ。1.5度でこの大惨事だ。もし、気温が4.4度も上昇すれば人類は滅亡へと向かうだろう。もはや、この問題は私たち人類存続に関わる大問題であることはいうまでもない。
環境省ファッションコンソーシアムが抱える、構造的欠陥
さて、米国と中国は経済が成長を取り戻しているようだ。しかし、日本は新型コロナウイルスの拡大を抑えることができず、やれることは国民に「お願い」を繰り返すのみ。誰もが、今後、何年もこのウイルスとお付き合いながら生きてゆくことになると感じている。ニューノーマルなど、横文字を使ってお茶を濁しているが、結局はウイルスの封じ込めができなかったということだ。こうした経済環境下の中で、環境破壊第二位の極悪産業と言われるアパレル業界に目を向ければ、まず百貨店、および、百貨店向けにビジネスを行っているアパレルは壊滅的な打撃を受け大きく構造を変えることになる。
百貨店は駅前の一等地以外は不動産価値のある場所だけが残りデベロッパーとなるか廃業が増えるだろう。
そこに追い討ちをかけるかたちとなったのが、SDGs目標に直接つながる「カーボンニュートラル」の問題だ。バーバリーの売れ残り焼却問題に端を発したものだが、これがアパレル業界全体で解決すべき課題へと発展した。
自動車産業は、EV (電気自動車)が世界の標準になるなか、トヨタ自動車は水素エンジンにより、あくまでも従来の技術継承でこの難局を乗り切るつもりのようだ。また、多くの他産業に目を向けても、もはや不可逆的に進行する環境破壊と人類の存続危機に対応を迫る必要がでてきている。
こうした中で、アパレル業界も沈黙しているわけにゆかず、鳴り物入りでコンソーシアムを立ち上げた格好だ。しかし、この取り組みに対して、私は構造的な欠陥をはらんでいる気がしてならない。
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