創業50周年に向け、中期経営計画をスタート=フジ 尾崎英雄 社長

聞き手:下田健司
構成:森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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今年5月から移動販売を開始

──「お客さまに近づく」というのは、SMを積極出店するということですか。

尾崎 それだけではありません。商圏人口が十分でなかったり、適地が見つからなかったりといった場合、われわれのほうからお客さまに近づいていくことを考えています。今年5月11日から、移動SM「おまかせくん」をスタートしました。本部に隣接する「フジグラン松山」を拠点に、食品をはじめ生活に必要な商品をお届けする移動販売です。

 松山市の伊台地区、道後地区、湯の山地区、五明地区を、現在2台の専用車両が週2回訪問しています。冷蔵設備を整え、青果・鮮魚・精肉といった生鮮食品も販売しています。購入商品1個につき、出張販売手数料は10円をいただいています。1車両当たりの品揃えは約350アイテムで、弁当など別注にも応えています。今後、さらにもう1台を増やして、訪問エリアを拡大する予定です。

──移動販売は松山市以外での展開も計画していますか。

尾崎 まずは、松山エリアで採算ベースに乗せたうえで、ほかのエリアにも広げていければと考えています。ただし、このサービスの根本にあるのは、家の近くに店がなく、食品や日用雑貨の購入が困難ないわゆる「買物弱者」への対応です。すべてのエリアで利益を上げようとするのではなく、全体として採算に合わせるという考えで買物弱者をサポートしていきたいと思っています。

──移動販売のほか、「フジカタログ注文サービス『おまかせJP便』」も提供しています。

尾崎 日本郵便四国支社との提携により行っているサービスです。会員が自宅の郵便受箱など指定の場所に注文書を入れておくと、郵便配達員がそれを回収して、近くの店舗から商品を届けるというものです。これも買物弱者への対応策の1つで、12年10月から徳島県でスタートしました。12年11月に高知県、翌13年5月には香川県、14年9月には愛媛県でもサービスを開始しています。配達できないエリアもありますが、徐々に広げているところです。

 カタログ注文サービスだけでなく、ネットスーパーの「おまかせくん」にも力を入れています。生鮮食品を含む食品、日用品など幅広く扱っており、利用者は確実に増えています。今年2月からは、グループのドラッグストア、レデイ薬局(愛媛県/三橋信也社長)との連携により、医薬品の提供も可能になりました。

 こうした店舗以外のサービスも充実させ、各地域の暮らしを支える役割を果たしていきたいと思っています。

ユニー、イズミヤとの3社協業は変わらず

──流通業界では合従連衡の動きが活発化しています。イズミヤ(大阪府/四條晴也社長)は昨年、エイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/鈴木篤社長)傘下となり、ユニーグループ・ホールディングス(愛知県/佐古則男社長)はファミリーマート(東京都/中山勇社長)との経営統合に向けた話し合いを進めています。ユニー、イズミヤ、フジの3社の提携関係に変化はありますか。

尾崎 担当者レベルでは、今のところ混乱はなく、従来どおりの活動をしています。ユニー、イズミヤ、フジに加え、サークルKサンクスで販売するプライベートブランド(PB)「スタイルワン」「プライムワン」は、アイテム数を増やしながら品揃えを強化しているところです。今後も同様の活動を続ける考えで、PBの共同開発以外にも、人事、テナント、建設などの分野で情報交換を行っており、これをコスト削減という相乗効果につなげていきたいと考えています。

 われわれを取り巻く経営環境は急速に変化しており、3社の協業はいずれ曲がり角を迎える可能性もないわけではありません。イズミヤさん、ユニーさんは実際に大きな決断をされたわけですし、今後、何が起こるかは誰も予想がつかないというのが本当のところです。ですから、あらゆる事態を想定した準備だけはしておく必要があります。

──昨年、愛媛県のSMから事業を譲り受けしました。

尾崎 昨年9月から、地元のSM企業、エービーシーさんの5店舗を、当社グループのフジマート四国(愛媛県/永井信章社長)の店舗として営業しています。今後、このようなケースが増えることも十分に考えられます。ただ、傘下に収めた企業を、フジの“色”に染めてしまうのは本意ではありません。SMというビジネスは、地域のお客さまに支えられて成り立つ事業ですから、M&A(合併・買収)は相手企業のよさを残したうえで進めていければと思います。

──SM以外では、フジグループのドラッグストア企業、レデイ薬局(愛媛県/三橋信也社長)に対し、ツルハホールディングス(北海道/堀川政司社長)と共同でTOB(株式公開買い付け)を実施しました。

尾崎 15年2月期、レディ薬局の売上高は約500億円(単体)で、この規模では将来生き残っていくのが難しいとの判断です。そこで資本を入れてもらい、ツルハさんの店づくりのもと事業拡大します。12月から新体制がスタートする運びです。

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構成

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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