個店経営でお客のニーズに対応、全員参加の商売が個店を強くする=ヤオコー 川野 幸夫 会長

聞き手:下田健司
構成:小木田 泰弘
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ヤオコーは「チェーンとしての個店経営」

──現在、大手小売業が個店経営や地域密着を志向し、本部主導型の組織運営を変えようとしています。どのように見ていますか。

川野 当たり前のことだと思います。

 先ほどお話ししたように、お客さまのニーズは多様化、個性化、高度化し、要求水準も高まっていきます。店ごとに異なるお客さまのニーズはあるはずなので、それにしっかり対応していかないと、お客さまに支持されません。コモディティディスカウント型にしろ、食の提案型のSMにしろ、お客さまにいちばん近くで接している店に権限を委譲し、店が商売の主体になるのは必然です。どのような権限を店に与えるのかは企業によって違いがあるとは思いますが、店に主体的に商いをしてもらうという考え方は同じだと思います。

 本部に一握りの優秀な人材がいれば、本部主導型のチェーンストア運営はできます。しかも、店の従業員を育成する必要がないので楽です。昔はこの運営方法で大きく成長できました。

 一方、個店経営は、店の従業員に主体性を持って商いをしてもらうわけですから、人材育成がカギになります。大手が個店経営に舵を切ろうと言っても、一筋縄ではいかないでしょう。

 また、企業規模が大きくなるほど、経営者の思いや考えが店に届きにくくなります。個店経営をめざすうえでは、どのようにそれを店の従業員に伝えていくのかも重要です。

 個店経営とは、本部主導型のチェーンストア運営を否定しているわけではありません。ヤオコーは、本部の商品部が一括で商品を仕入れるし、バイヤーが全国を飛び回って商品を発掘します。店ごとの成功事例も本部が仕組みをつくって全店舗で共有しています。商いの主体が店であって、その個店経営の実現のサポートをするのが本部なのです。店が「こうして欲しい」「こんな商品はないか」と言えば、本部は全力でサポートする。本部の商品部は店に対して“提案”するのです。しっかりと本部と店が役割を分担し、企業規模や店数の多さを生かしていく。ヤオコーの組織運営は「チェーンとしての個店経営」と言えるでしょう。

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構成

1979年生まれ。2009年6月ダイヤモンド・フリードマン社(現ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の編集・記者を経て、2016年1月から「ダイヤモンド・ドラッグストア」誌副編集長、2020年10から同誌編集長。

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