全体最適を進め、競争優位性を確立して「攻めの商売」に転じる=マルエツ 上田 真 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
構成:小木田 泰弘
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「割り切り」をテーマに社内で議論

──経営方針の2つめのテーマ「マネジメント力の強化」では、店舗と本部の役割を明確化することを掲げています。

上田 当社の経営上の最大課題は売上高販売管理費率の高さです。多くの上場SMの売上高販売管理費率は20%台ですが、当社の場合は30%超あり、労働分配率は50%を超える水準にあります。そこにメスを入れずして業績を上向かせることはできません。したがって経営方針の3つめのテーマ「腰の低い経営体質」とは、損益分岐点を下げるという意味になります。

 当社の中で半数以上を占める日販200~500万円規模の店舗のオペレーションコストを低減し、効率改善を図ることができれば大きな効果があがります。

 これらの店舗は、仕入れや販売計画を現場の従業員が立案するようにしていましたが、業務が多すぎて手が足りず、結局は売場の実現力が落ちていました。ですから店舗と本部の役割を明確化することを徹底します。あわせて、商品の発注などパートタイマーさんに任せられる仕事については、しっかりとルールやマニュアルを決めたうえでお願いするようにします。

 そして売上高や粗利益高アップにつながらない、あるいはお客さまに喜んでいただけないようなサービスはやめようと考えています。

 代表例としては店舗で作成する報告書の類が挙げられます。今までは、本部が店舗に「報告のための報告」を多く求めていたきらいがあります。これを「一切やめよう」と指示しました。

 従来は、店舗に「何をやってもらうか」「何を加えるか」というのが経営戦略を考えるうえでのベースになっていました。店舗に「あれもこれも全部正確にやってください」と求めたために、ハイコストなオペレーションになっていたのだと思います。だから私は「何をやめるか」から始めるべきだと考えています。

──「何をやめるか」というのはとても面白い発想です。

上田 削ってもいいコストと、削ってはいけないコストがありますから、現在、「割り切り」をテーマに社内で会議を重ねているところです。品揃えや価格、接客などのサービスは一定の範囲にとどめるべきだと考えていて、実際に店舗の声を多く聞いているエリア部長クラスと議論していきます。

 たとえば、深夜0時にご来店されたお客さまから「私の欲しい鯛のお刺身がない」と指摘されたとします。従来であれば「発注に気を付けます」「次からは品揃えします」というようなスタンスでしたが、これは改めます。つまり、「すみません、この時間ではもう鯛のお刺身はご用意できません」とお客さまにお伝えするのです。SM本来の商売・サービスが大切で、「過剰サービス」のようなことはなるべく減らしていきたいと考えています。

 ただし、03年から展開しているネットスーパーや、一部の店舗で実験中の「御用聞き」サービスは、利益が出ないからといってやめようとは思いません。ネットスーパーは将来的な可能性を考慮して事業を続けてきましたし、サービスを提供することでお客さまのニーズがどのようなところにあるのかを知ることもできます。

 まずは、「過剰サービス」のような生産性の低いことや余計なことはやめて、お客さまに本当に喜ばれることに力を発揮できるように、原点に立ち返って現場を元気にすることに力を入れたいと考えています。

マルエツ
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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

構成

1979年生まれ。2009年6月ダイヤモンド・フリードマン社(現ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の編集・記者を経て、2016年1月から「ダイヤモンド・ドラッグストア」誌副編集長、2020年10から同誌編集長。

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