実録!働かせ方改革(9) 残業時間削減で管理職育成をした小売店のここがスゴい!

2020/03/05 05:47
神南文弥 (じんなん ぶんや) 

働き方改革が進み、残業時間削減や有休休暇促進、在宅勤務に踏み込む会社が増えてきた。それにともない、働きやすい職場が注目されている。本シリーズでは、部下の上手な教育を実施して働きがいのある職場をつくり、業績を改善する、“働かせ方改革”に成功しつつある具体的な事例を紹介する。
いずれも私が信用金庫に勤務していた頃や退職後に籍を置く税理士事務所で見聞きした事例だ。諸事情あって特定できないように一部を加工したことは、あらかじめ断っておきたい。事例の後に「ここがよかった」というポイントを取り上げ、解説を加えた。
今回は、残業時間削減の一方で、管理職の負担が大きくなり、それを克服する試みをした小売店を紹介したい。

Photo by itakayuki
Photo by itakayuki

第9回の舞台:医療機器販売

(社員900人、アルバイト、パート3500人)

 

部下を育成する余裕がない管理職に
コーチングスキルを学ばせる

「働き方改革で特に一般職(非管理職)の残業を月平均35時間前後から10時間程に削減できた。だが、そのしわ寄せが、課長や部長などの管理職に行ってしまった。管理職の残業時間は依然、40時間前後のまま。繁忙期は、50時間を超える場合もある。部下の面倒や育成をする時間的や精神的な余裕がほとんどない。そこで始めたのが、1 on 1 (ワンオンワン) ミーティングだ」

 2週間ほど前、人事部の課長が私のヒアリングに答えた。残業時間削減で生じる問題を知るために尋ねた時のことだ。

 1 on 1 (ワンオンワン) ミーティングとは、会社や部署によりその内容や進め方の多少の違いはあるが、この会社の場合は、上司と部下が毎週1回、30分間~1時間行う対話のことを指す。テーマは、その週の仕事の課題や問題、進捗などだ。互いに密な話し合いをすることで、仕事のムリ、ムダ、ムラを減らすことが狙いである。

 とはいえ、人事部が一般職にアンケ―ト調査を行ったところ、このミーティングを始めた当初は、さまざまな不満が出てきた。多くは「ミーティングの場で、上司が『なぜ今週はこの仕事ができなかったのか?』などと詰めてくる」だった。「ミーティングは終始、上司が詰問調で、警察の取り調べに近いニュアンス」といった声も挙がった。

 そこで人事部が3年半前から始めたのが、外部の人事コンサルタントを招いての管理職向けの研修だ。特に3つのスキルをマスターする。

 1つは、「傾聴」(相手の言い分を否定せず、話を「聴く」会話の技術)、2つめが「承認」(観察して得た事実を伝える)、3つめが「質問」(本人が気づいていない可能性などを引き出し、意識させる質問)だ。こうしたコーチングスキルを、管理職がある程度心得るようにしたのだ。

 その後も人事部は、3ヵ月毎に全社員を対象とする1 on 1 ミーティング(この場合は人事部と対象者)のほか、残業削減などについてのアンケート調査を実施している。管理職研修を終えた1年後には、ほとんどの一般職の回答から「不満」が消えた。一部には、この話し合いそのものを疑問視する社員もいるが、おおむね広い層から受け入れられている。

 人事部長は「賛否両論があっていいが、上司と部下がじかに向かい、現状や課題を共有することは大切。今後も、説明を繰り返して浸透させていきたい」と話していた。

 

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