ユニクロが「流行を身にまとう」呪縛から解き放ったといえる理由とアパレルの特殊性
「流行を身にまとう」呪縛から解き放ったユニクロ
衣料品というのは、考えれば考えるほど不思議で奥が深い。
もし、服が防寒だけを目的としたものであれば、日本人のわれわれが3〜4ヶ月に1度は新しい服を買うといわれている説明がつかない。
これは、「ファッション」という「流行」が服にはあるからだ。流行は単サイクルで変わってゆくため、その流行した服を身にまとえば、自分が最先端にいる証明となるため、単なる服とは異なる魅力や意味合いを持つ。
ただし、誰もが「流行」を追いかけたいとは思っていない。「流行には興味がない層」も一定程度、というよりも大多数存在する。そういう人達がユニクロの服などを買うわけで、こうした流行にとらわれない層の方が、流行を身にまといたいと考える層より多い。
そのように考えると、ユニクロがこれほど頭角を表す前は、人はファッションという「流行」に追われ、(お金がおそろしくかかるなど)辛い目にあっていた。それをユニクロが課題解決してくれた、とみることができる。
この国民服を作りあげた、というのがユニクロの強さの本質だ、といえるだろう。
この「流行の単サイクル化」は、さらにアパレルを独特の世界へ連れていく。
この論考でも幾度も書いたが、マーケット価格は損益分岐によって変化するのではなく、値付けと消化率のかけ算で変化する極めて戦略的な変数であるということだ。つまり、目くじらをたてて原価を下げても、その結果「チープ感」がでている服を世に出して販売が不振になれば、余剰在庫がでて、それが評価損を計上することとなり、プロパー消化率は下がってくる。
結果、原価があがり血のにじむような努力で絞ったコストも相殺されてしまうのだ。これだけ円安が続き、原材料の値段も上がっているのに、いま日本のアパレル企業の調子が良いのは、「セールをしてむやみに値引きをしない」こと「仕入れた商品は売り切ること」の2つを実直に守っているからだ。
さて、嵐の前の静けさともいえる海外からのインバウンド、そして、中国春節の2つの神風によって一息ついているアパレル業界だが、いまから5年後、Z世代と呼ばれる新しい消費者がマーケットの主役になったとき、アジアからの激安ファッションに私たちは勝つことができるのか?
今年はシーインも米国で上場を狙っているようで、ますますこの産業から目が離せない。
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
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