売上伸長だけじゃない!食品スーパーが積極投資したくなる冷食の魅力とは

宮川耕平(日本食糧新聞社)
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メリット3 遠方に販売できる 

新店や改装店で冷食売場の拡大は続く(ダイエー イオンフードスタイル横浜西口店)
新店や改装店で冷食売場の拡大は続く(ダイエー イオンフードスタイル横浜西口店)

 距離に制約されないことのメリットは、遠方からの調達にとどまりません。遠方への販売も、冷食であれば可能性が広がります。

 例えば予約販売のクリスマスケーキや、おせちです。これらは消費する日にちが固定しているので、チルド商品の場合だとその日に目掛けて製造キャパにも物流キャパにも限界が出てしまいがちです。冷凍なら、あらかじめ作りおくことが可能になります。

 今年(2023年)の百貨店ギフトのクリスマス用ケーキの中に、届け日は12月21日か22日と指定されているものがありました。クリスマスには早すぎるのでは? と思いましたが、よく見れば冷凍で配達とあります。それならクリスマス当日に合わせて解凍すればいいわけです。冷食には製造や物流のピークを緩和する効果もあります。

 以前の記事「EC化率4%台からの展望 食のデジタルシフトはどこまで進むか」でも触れましたが、大丸松坂屋百貨店は、おせちの販売増に向け、冷凍おせちの拡販を図っています。同社のおせち商品に占める冷凍比率は22年で1割ほどですが、オンライン専業の楽天市場になると、おせち販売の7割が冷凍商品と言います。全国配送には冷凍の方が向いています。

 もっと日常的な消費でいえば、イオングループのオンラインマーケット「グリーンビーンズ」は、鮮魚ニーズを満たす方法として冷凍の刺身や切り身の展開に力を入れています。同事業の特徴である広域配送の仕組みとまとめ買いスタイルを追求するうえで、生の刺身のように当日期限の商品ではサービスのコンセプトと相入れません。冷食で補うことができれば、鮮魚のまとめ買いという購入スタイルが実現します。

 冷食だからこそ高価格帯に挑戦でき、全国から高価格帯の商品を調達でき、それらをネットを通じてリアル店舗の商圏よりはるかに遠方にまで販売できる・・・・。こうしたメリットが、店側の意欲を掻き立てて品揃えを広げ、それが消費者ニーズをいっそう高め、さらに店側の商品開発意欲を駆り立てるという好循環を生んでいます。

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