栗原憲二・伊勢丹新宿本店長インタビュー 売上V字回復の裏にあった「コミュニティMD」とは

野澤正毅
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コロナ禍でわかった得意客の有難み

――好調の理由について、どのように考えておられますか。

栗原 2021年度は、20214~6月に緊急事態宣言による一部フロアの休業(4/25〜5/11は食品・化粧品以外、その後売場ごとに徐々に営業を開始)を余儀なくされたほか、8月以降も新型コロナウイルス感染拡大に伴う入店制限などもあったため、売上が大きく落ち込みました。反動増は当然、あったと考えています。巷間言われるように、コロナ禍でのリベンジ消費の影響もあるのかもしれません。しかし、これまで当社が取り組んできた経営改革が、実を結びつつあることも大きいと受け止めています。

――どのような経営改革が、奏功したとお考えなのでしょうか。

栗原 端的に言えば、コアターゲットを「マス」から「個人客」にシフトしたのが、ジャストミートしたと考えています。実は、百貨店はコロナ前から、構造改革を迫られていました。専門店やショッピングモールとの競合、ECの拡大などによって、経営環境が厳しくなっていました。それに拍車をかけたのがコロナ禍です。しかし、逆に言えば、コロナ禍によって、これまで当社を支えてくださった“お得意さま”の有難みを改めて実感し、「個人客重視」の経営姿勢に一挙に転換したのです。

――マスから個人客へシフトした、そのねらいを教えてください。

栗原 伊勢丹新宿本店は、もともと「世界一のファッションミュージアムを目指す」というコンセプトを掲げ、国内外の高感度・上質なブランドの集積に努めてきました。当店としては、当社の中期経営計画とリンクする形で、①新宿という立地を生かした集客力アップ、②顧客化(流動客の固定客化)、さらに、③LTV(顧客生涯価値)の最大化という、三つの経営戦略を打ち出してきましたが、①については従来、「マスを取り込む」というのが前提の経営戦略だったわけです。必ずしも「一人ひとりのお客さまに向き合う」ということではありませんでした。ところが、当店も、中心客層の高齢化、ニーズの多様化などによって入店客数が伸び悩むようになりました。そこで、不特定多数のお客さまを集めるよりも、お得意さまに何度も足を運んでいただくことに、力を入れようと考えました。

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