全85アカウントでスタッフが顧客と「1対1」でつながる 三越伊勢丹のSNS活用戦略とは

野澤正毅
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新型コロナウイルスの蔓延によって、店頭での接客が難しくなった流通各社は、デジタルシフトを加速させている。とりわけ、顧客と流通業をつなぐ新たなメディアとして注目されているのがSNSだ。そんな中、三越伊勢丹(東京都/代表執行役社長 細谷敏幸)は、SNSを介したコーディネート提案、社員のアカウントからの情報発信を強化している。従来から顧客とのワン・トゥー・ワンのコミュニケーションを重視してきた百貨店にとって、SNSは好適なデジタルツールなのかもしれない。

ECでもコーディネート提案が可能

インテリアスナップ一覧
インテリアは部屋の一角に絞って提案する                      

 コロナ禍を契機として、デジタルシフトが加速している。とりわけ、インターネットを介したコミュニケーションでは、SNSの普及に伴って、TVや雑誌など従来型のマスメディアとは違った、情報の「発信者」と「受信者」という「個人と個人の結びつき」が強まっている。流通業界も無論、そうした流れと無縁ではない。

 百貨店大手の三越伊勢丹は、マーケティングや販売といったさまざまなビジネスシーンで、SNSを積極的に活用する戦略に乗り出した。

 リアル店舗を主力としていた百貨店は、コロナ禍でビジネスモデルの一大転換を迫られている。だが、もともと“対面販売”がメーンなので、SNSを介したスタッフと顧客とのワン・トゥー・ワンのコミュニケーションは、親和性が高いと言えるかもしれない。

 同社はECの拡大に伴って、デジタル環境でコーディネート提案などのオンライン接客が展開しやすいECアプリケーションシステム「スナップ(スナップ投稿)」を20214月から導入。婦人ファッション・紳士ファッション・インテリアを対象に、オンラインでのコーディネート提案をスタートした。

 ECサイトの登録商品数は婦人・紳士で76000型、リビング12000型。8月までにスナップを利用して商品を購入した顧客は、約6300人に達するという。

 同社MD統括部 オンラインクリエイショングループ メディア運営部の田代径大氏は、「ECでは、リアル店舗のようにスタイリングできる機能がなかったので、服を実際に着た感じがわからないと、お客さまの不満が高まっていたからです」と説明する。

 例えば、伊勢丹新宿店本館3階には、国内外からセレクトした最先端の婦人ファッションを紹介する「リ・スタイル」という自主編集売り場があるのだが、「最先端のエッジの効いたデザインの服をECで購入されたお客さまが、自分には合わないと返品されるケースがありました。しかしスナップ導入後は、事前に着た感じを想像できるため、そうしたケースが減ってきています」と、田代氏は明かす。

三越伊勢丹ならではの2つの特徴とは

 オンラインでのコーディネート提案は、ほかの流通各社も取り入れているが、三越伊勢丹ならではの特徴が二つあると、田代氏は強調する。

 一つは、カテゴリーをまたいだり、ブランドの垣根を越えたコーディネートも可能であること。

 例えば、婦人ファッションであれば、洋服の全身コーディネートはもちろん、バッグやシューズ、アクセサリーといった服飾雑貨まで合わせてみることもできる。「ブランドショップであれば、同じショップのアイテムしか合わせられませんが、場合によっては、ほかのブランドショップからも選べるのが、百貨店の強みですね」(同)。

 インテリアではダイニングテーブルと食器などの組み合わせを紹介しているが、「高価格帯の家具や食器については、オンラインでコーディネート提案をしているのは非常にめずらしいです」と、田代氏は続ける。

 「リアル店舗と違って、表現できるネット上のスペースには制約があります。アイテムの使い方やシーン別のイメージを、お客さまに理解してもらうのがスナップの役割です」(同)。

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