ユニクロ柳井正が今、考えていること

2019/04/16 05:00
小野貴之(『ダイヤモンド・チェーンストア』誌)
高浦佑介(『ダイヤモンド・ホームセンター』誌)

2019年8月期第2四半期決算説明会の席上で、企業として「まったく違うステージに入った」と宣言したファーストリテイリングの柳井正会長兼社長。日本企業を代表する経営者の1人である柳井氏は今、何を考えているのか。記者からの質問に答えた柳井氏の発言をまとめた。

写真:ロイター
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「失敗の原因は、同じことを繰り返すこと」

――有明プロジェクトについて質問です。「お客さまにとって不都合なことをすべて解消し、満足を提供する」という文脈のなかで、「初期段階ではあるけれども、具体的に環境が整ってきた」とおっしゃっていました。これは具体的に何を指すのかお聞かせください。
柳井 まず、全員合同で仕事をしていくということ。部署別ではなく、商品企画、生産、マーチャンダイザー、店頭、そういった人たちが一度にすぐに集まって問題点を討議する。そういったことを常時できる環境と、そういうことが仕事であるという意識ができてきたと思います。
 今までは、部署別に仕事をするのが「仕事」でしたが、同時期にさまざまな部署の人とコミュニケーションして結論を出す。そして実行する。そういったことが「仕事」だというふうに意識が変わってきたのかなと思います。

――座右の銘の1つである「企業は欠乏によって滅びるのではない、過剰によって滅びる」について。柳井さんの目から見て、ファーストリテイリングという会社のなかで「今のままでは過剰である」「これは減らさないといけない」と思っていること、また、それをどうやって減らしていくのかをお聞かせください。
柳井 過剰とは、「油断」ということだと考えています。事業がうまくいっていると、これは人間の習性ですが、同じことを繰り返します。同じことを繰り返すことは、失敗の原因になります。
 去年も今年も来年も同じということはまったくありません。去年と今年は違うし、今年と来年も違う。この「違う」ことがどういうことか、日々の数字や、店頭の情報を「三現主義」(現場・現物・現実)でみて、その時点で全員の情報を集結して、理解して、判断して、実行していく。こういうことを繰り返すことが大事なんじゃないかなと思います。
 企業というのは、放っておくと潰れます。そのような習性を持っていると思います。ですから、そういったことがないようにするための経営者の危機感が一番重要なんじゃないかなと思います。

――国内の出店戦略について質問です。ここ最近のトレンドを見ると、出店数を退店数が上回る状況が続いています。国内は飽和しているという認識なのでしょうか。
柳井 スクラップ&ビルドの必要はあるんじゃないかと思います。今後は「店の意義」がある店舗しか存在し続けられないでしょう。お客さんにとってプラスになっているかどうか。そういう機能を持っているかどうかが大事であって、ダイレクトビジネス、つまりECのほうがよい(とお客さまに思われてしまう)ような場合は、取って代わられると思います。
 ただ、とくにアパレルの場合は、サイズとか色とか質感とか、実際に着てみなければわからない商品が非常に多いです。今後は、ECと小売と結合した新しい業態・業種みたいなものに全部の会社が向かうんじゃないかと考えています。その延長線上で、意義のあるお店、「自分たちの店だ」と言われるような品揃えの充実した店になっていくんだと思います。

 

「インドは将来の大国になる」

――有明プロジェクトが、「実践段階」に入ったとおっしゃっていましたが、何をもって「実践段階」に入ったのか、もう少し具体的に教えてください。また、以前から柳井さんは「情報製造小売業」というキーワードを出されていました。この観点から有明プロジェクトの実践段階をどう捉えればいいのか。
柳井 この超情報化社会のなか、今後は、中国のようなデジタルを使ったO2O(オンライン・トゥ・オフライン)が決め手になるんじゃないかな思います。ただ、実際にサービスをするのは店頭の社員ですので、彼らとヘッドクオーターがいかに一緒に仕事をしていくことができるか。お客さまのために最善の策を講じることができるのか。そういうことが大事だと思います。
 ECであっても小売であっても変わりはありません。いつでもどこでも誰でも買える、そういう環境を作ることができないかなと。それが有明プロジェクトということです。そういったものに、先程話したような、企画、生産、販売、物流が一緒に仕事する、そういった環境が必要になってくる。そして、そのような情報をまんべんなく共有して仕事をしていく、というようなスタイルに全員が変わっていくんじゃないかと思います。

――中国事業が好調とのことで、今後も伸びていくという考えだと思います。ただ、中国の小売統計や消費をみると、少し不安の芽がみられます。そのなかで会社として中国事業をどう見ているのでしょうか。あと、二級都市、三級都市に出店されるということで、中間層の厚みが一級都市と違ったり、立地条件もなかなか難しくなったりすることが考えられます。今後の出店戦略について教えてください。
柳井 私は、アパレルに関しては、そのようなこと(中国消費の変調)はないと思います。年間50兆円の需要があるうえ、われわれはまだ1000店舗にも達していない。(中国には)13億人の人がいるという事実があります。その人たちが生活の向上を続けて、いよいよ中間層になって、実際の購買層になっていく。「生産」だけじゃなく、「購買」においても中国は世界最大のマーケットになっていくと思います。そして、二級都市、三級都市といっても、日本で考えるような二級都市ではなく、それぞれが何百万人という人口があり、中間層もたくさんいる。けして(景気が)減速することはないんじゃないかと思います。

――今後の展望でおっしゃっていたインドについて。改めて、インドのマーケットのポテンシャルをどう見ているか教えてください。
柳井 インドは将来の大国になると思います。市場としてまだ未開発です。たぶん20年、30年前の中国のような現状だと思います。ただ、理科系の高等教育に関してはすごく立派な人材がいますし、ITの世界を見ても代表的な企業のCEOはインド系がたぶん一番多い。今後は経営者人材でインド系の方々が世界でも活躍するんじゃないかと思いますので、ぜひわれわれも一緒に仕事をしていきたいと思っています。

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