小型SM「まいばすけっと」とネットスーパーで成長戦略描く!=イオン北海道 柴田祐司 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
構成:小木田 泰弘
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「まいばすけっと」は最低でも100店舗を出店

──北海道は人口減少が進み、マーケットは縮小傾向にあります。どのような成長戦略を描きますか。

柴田 今後、食品にしても衣料品にしても、売上が対前期比5%増、そして10%増になる可能性は極めて低いと考えています。北海道は縮小マーケットですから、その中で自分たちの「パイ」をしっかりと守りながら、既存事業の売上を少しずつ伸ばしていくことになると思います。

──成長戦略という意味では、12年3月から小型食品スーパー(SM)「まいばすけっと」の出店を開始しています。

柴田 「まいばすけっと」は当社の次期成長エンジンと位置づけています。

 北海道は人口が減っていきますから、これまでのように大きなショッピセンター(SC)を郊外に数多く新規に開業するわけにはいきません。そして人口が集中している札幌市は、実はこの8月から用途地域等の見直しにより延床面積1万平方メートル以上の店舗が郊外にほぼ出店できなくなります。このような状況から、札幌市内への小型店の出店という選択肢が浮かび上がりました。

 札幌市のマーケットを分析してみると、人口は増加傾向で高齢者が多く住んでいます。札幌市外と比べてクルマの保有率は低く、自転車や徒歩圏内で買物する消費者が多い。だから「まいばすけっと」が出店できる余地はたくさんあると判断しました。

──札幌市への「まいばすけっと」出店の第一報を聞いた際、マックスバリュ北海道が事業を展開するものだと思いました。なぜマックスバリュ北海道ではなく、イオン北海道が事業を手掛けることになったのですか。

柴田 「『まいばすけっと』をやりなさい」と言われたわけではなく、自ら手を挙げました。当社の成長戦略を考えたときに、GMSやSCをあまり出店できないならば、それとは異なる業態を新規に手掛けることでしか成長できないと考え、「『まいばすけっと』にチャレンジさせてください」と岡田元也社長に直談判しました。

 GMS1店舗の投下資本回転数は1~1.5回転ほどで効率はあまりよくはありません。ところが「まいばすけっと」ならば仮に1店舗の年商を2億円として計算すると、初期投資が4000万円ならば投下資本回転率は5回になります。それが100店舗になればそれだけで年商は200億円です。

──15年2月期までに「まいばすけっと」を100店出店すると聞いています。

柴田 そうです。事業開始の前提として、関東エリアの「まいばすけっと」の出店条件を札幌エリアに当てはめ、それを満たせるのかどうか、またどれぐらいの出店余地があるのかをしっかりと検討しました。そうすると最低でも100店舗は展開できるという結論になりました。今後、「まいばすけっと」を確実に成功させ、競合他社のシェアを奪取していきます。

──一方で、ネットスーパーの取り組みも本格化させています。

柴田 ネットスーパーも成長戦略のひとつです。現在、北海道の人口の90%超をカバーできるまでサービスの展開エリアを拡大しています。今後の課題はいかに早く事業を黒字化できるかどうかです。そして黒字化に向けてのアイデアはたくさんあります。

人に投資するのはイオンのDNA

──店舗改革を担う人材の育成にも力を入れています。

柴田 収益力が改善してきたこともあり、「人」に投資ができるようになりました。

 3カ年計画で掲げた「次代を担う人材育成」では、販売課長養成コースを設置して若手の育成に努めているほか、スポーツサイクルアドバイザーやハンドクラフトアドバイザー、一般用医薬品を販売できる登録販売者を育成しています。

 昨年から始めた販売課長養成コースでは、販売課長になっていない従業員を対象に自ら名乗りをあげてもらい、当社独自の教育を施しています。すでに約25人が研修を終え、若手を中心に5~6人が店舗の販売課長になっています。

──12年6月には米国を視察したと聞いています。

柴田 そうです。若手を中心に従業員約30人を選抜して米国の流通視察を行いました。これも利益を出せるようになったから可能になったことです。

 視察に行った従業員は、自身が担当する売場や商品を時間をかけて分析したり、現地のコーディネーターの話を逐一メモするなど、非常に勉強熱心でした。一般的に無気力と言われる若者ですが、当社の従業員は「企業をよりよくするために自分は何をしなければならないのか」といったことを自ら考えることができるということがよくわかりました。

 成長戦略に位置づける「まいばすけっと」や食品フロアへのテコ入れもそうですが、すべては資金がなければできないことです。資金ができたら次のステージにつなげる「種まき」をしなければなりません。そうしなければ企業としての発展はあり得ないからです。

 中でもいちばん大事なのは「人への投資」だと私は考えています。次代を担う人材を育成し、どう開花させられるのか。その手助けをするのが私の仕事です。今後も人材の育成に力を入れ、経営基盤をより強固なものにしていきます。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

構成

1979年生まれ。2009年6月ダイヤモンド・フリードマン社(現ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の編集・記者を経て、2016年1月から「ダイヤモンド・ドラッグストア」誌副編集長、2020年10から同誌編集長。

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