低価格戦略見直し、MDで差異化、食のインフラ化で需要創造=コープさっぽろ 大見英明 理事長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──もうひとつの「コープ配食サービス」はどんな事業ですか?

大見 配食サービスは、もともとは1人暮らしの高齢の組合員さんの安否確認をどうするのかと、行政とも話し合う中で着想を得た事業です。

 週1回商品を配達する宅配事業の「トドック」の配送スタッフは、年に数回、訪問先の高齢者の異変に気付いて救急車を呼ぶことがあります。そこで組合員さんと会う機会を週2回以上に増やせないかと思案しました。

 安否確認が必要になるような高齢者の方は、体に不自由があり、料理をつくることもままなりません。そこで食事を配達することを思いつきました。

 配食サービスは10年11月から札幌市や石狩市、小樽市、岩見沢市でスタートし、対象エリアを徐々に広げています。1食当たり「低カロリー食コース」が498円、「普通食コース」が590円で、プロセスセンター(PC)から週3~6回夕食を配達します。現在、札幌エリアの利用者は2000人ほどです。これが3000人を超えれば利益を出せるようになります。

 配食事業の課題は、いかに飽きのこないメニューを開発し続けられるかです。手づくり感があって、家庭の味に近いようなメニューを考案することがいちばん難しい。総菜のPCで配食用の弁当をつくるのではなく、今後、専用の工場を道内に数カ所つくることを検討しています。

手薄な札幌エリアに小型店を出店

──宅配事業や移動販売、配食サービスは「食のインフラ」になるという方向性がはっきり見えます。今後の店舗事業ついてはどのように考えていますか?

大見 地域の核になる店舗は、北海道の組合員さんの「食をインフラ」を支えていくという意味で、非常に重要だと考えています。現在、旭川以南の全道に店舗を展開していますが、店数が少ないエリアには新規に出店していくことを検討しています。

 既存店については当面はスクラップ&ビルド(S&B)が中心になります。不振店の見直しはもちろん、競争力が落ちている店舗については適宜S&Bを行って売場面積を拡大していきます。

──新規に出店するエリアはどこになりますか?

大見 札幌エリアです。これまで不採算店舗の閉鎖を進めたため、店数が少なく、組合員さんから出店の要請が多くあります。とはいえ、コープさっぽろがメーン展開してきた売場面積600坪、850坪タイプを出店するとなると、店舗用の敷地は3000坪ほど必要であり、そのような土地は札幌エリアにはほぼありません。そこでバックヤードを設けないタイプの売場面積450坪ほどの小型店を出店できないか検討しているところです。

 実は、すでに小型店の出店が決定している物件があります。さっぽろ高齢者福祉生活協同組合(北海道/川原克美理事長)さんが運営する老人ホームに併設する店舗です。福祉生協さんは札幌市東区の2カ所で有料老人ホームを運営しており、今後、新しい施設の開設に合わせて1階部分にコープさっぽろが小型SMを出店します。早ければ12年度、遅くても13年度には出店する予定です。福祉生協さんとは今後も連携して、SM併設有料老人ホームを開発していきます。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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