低価格戦略見直し、MDで差異化、食のインフラ化で需要創造=コープさっぽろ 大見英明 理事長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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競合が真似できない商品を開発して差異化図る

──では、どのような要素で競合企業との差別化を図っていくのですか?

大見 まずは競合が真似できないオリジナル商品を開発して差異化を図ることに重きを置きます。

 コープさっぽろは、11年2月から北海道産の飼料米で飼育した牛や豚、鶏などの畜産品「黄金育ちシリーズ」商品の販売を始めました。農協や地元の食品メーカーと連携して商品化したものです。

 北海道には減反による休耕田が多くあります。飼料米の生産には若干ですが国から補助金が出ますし、飼料米を売ることで農家の方々の収入も増えます。また飼料米で家畜を飼育することは食料自給率のアップにもつながります。さらに輸入穀物飼料が飼料米に置き換わるわけですから、海外からわざわざ飼料を運んでくる必要がなくなり、二酸化炭素の排出を削減することもできます。そうしたメリットがあることから、コープさっぽろは道内で生産されている飼料米の半分に当たる約700トンを押さえました。

 消費者に安全・安心な商品を提供するという本来の目的に加えて、生産者や地元食品メーカーの振興にもつながり、生産者と消費者、そして生協の3者にメリットがある取り組みだと自負しています。

 そして「黄金育ちシリーズ」だけでなく、ほかにもオリジナル商品の開発を進めて競合と差異化を図っていきます。

北海道の「食のインフラ」になる!

──今後、北海道では人口が減り、市場縮小に拍車がかかります。どのような成長戦略を描いていますか?

大見 11年3月31日現在、北海道の人口は550万人(267万世帯)です。人口は今後20年ほどで約100万人減ると予想されています。

 現状、コープさっぽろの宅配事業「トドック」を週1回、平均5000円以上利用されている組合員さんは28万人います。また、月2万円以上店舗で買物をする組合員さんは24万人います。この28万人と24万人という数は、実際は世帯数と見なすことができますので、日常的にコープさっぽろを利用しているのは全世帯の20%ほどになります。

 宅配事業については、毎年5万~6万人が新規に組合員登録する一方で、4万人ほどがやめてしまいます。理由は、「引っ越したから」「高齢になってあまり利用しなくなったから」などさまざまで、「注文用紙にいちいち書き込むのが面倒で注文しなくなった」という組合員さんも多くいます。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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