低価格戦略見直し、MDで差異化、食のインフラ化で需要創造=コープさっぽろ 大見英明 理事長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──どのような部分が支持されなかったと分析していますか?

大見 コープさっぽろの「価格」です。旭友ストアーはどちらかというとディスカウント色を強めた商売をしてきました。MDや価格政策のすべてを変えて生協の店舗として再スタートしてみると、従来からのお客さまは「高い」と判断されてしまったのです。

 コープさっぽろとしても仕入れ改革による原価低減を進めて低価格政策に注力してきましたが、旭友ストアー時代からのより低価格志向が強いお客さまに応えることができませんでした。

──しかしながら、北海道の小売業の主役はディスカウントリテーラーです。旭友ストアーでの教訓をバネに、今後もさらなる低価格政策に磨きをかけていくのですか?

大見 いいえ。逆に過度な低価格政策は見直そうと考えています。

 08年9月のリーマンショック以降、コープさっぽろは、組合員さんの生活に少しでも貢献したいと考え、「低価格」に重きを置いてきました。09年度からは野菜の売価を5%ほど引き下げたほか、加工食品3500品目の価格を15~30%引き下げた「北海道元気プライス」や、従来の半値に相当する「お試しください低価格」商品の販売などに取り組みました。

 もやし1袋19円、生めん1玉29円、豆腐1丁38円……と、定番商品を低価格で提供しました。しかし、組合員さんの多くは「安い」とは言ってはくれませんでした。実際、満足度調査をしても「商品の安さ」は、評価項目の上位には入っていません。つまり、組合員さんは「安さ」を求めているわけではなかったのです。

 北海道では小売業の淘汰が進み、それぞれの店舗の特色がはっきりしてきています。したがって、生協本来の強みである商品の「安全・安心」や「品質」にあらためて重きを置き、組合員さんを維持・深耕する方向に舵を切ります。

──今後は、「価格」以外の要素を武器にする。

大見 そうです。組合員さんは安い商品を率先して購入するわけではなく、品質のしっかりした商品を相応の価格で購入したいという傾向があります。

 ましてやチェーン間の競争が激しさを増している北海道では、「価格」で戦うと消耗戦になってしまいます。結局は体力勝負になり、経常利益を安定的に出している企業が勝つことになります。コープさっぽろよりも売上規模の大きいアークス(北海道/横山清社長)さんやナショナルチェーンであるイオン(千葉県/岡田元也社長)さんと、価格という土俵でがっぷり四つに組んで戦うことは得策ではありません。

 そこで、過度に低価格に重きを置いた価格政策は改める必要があるという認識に至りました。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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