商社の脱OEM戦略がことごとく失敗する理由と商社3.0の新たなビジネスモデルはこれだ!

河合 拓
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OEMの次をさぐる商社

 一方で、いわゆる専門商社は、高額な年収を下げながらも、自ら「オペ専」業務をハンズオンでやり切り、高い専門性は本社に残るものの、現実として全く儲からないビジネスとなっていった。

 この時点で、商社は、「OEMの次の柱」を見つけようと必死になった。大阪のヤギや伊藤忠商事、三井物産はブランド・ビジネスに活路を見いだし、瀧定は素材ビジネスに、そして財閥系商社は、他のポートフォリオと比べて不釣り合いということで、繊維事業のカーヴアウト(本体から切り離すこと)を進めていった。豊島、日鉄物産などは、アパレルとの垂直統合を進め、唯一残った財閥系三菱商事の子会社は、THE ME など、川上の強みをいかした工場との連携をいかした完全バイオーダーリテールを神宮前にオープンし再起をかけている。

 いずれにせよ、すべての商社は、PLM (商社機能を自動化する海外パッケージ)が日本中に広がり、多くのアパレルがPLMを導入して商社外しが猛烈な勢いで進みむなかで、【輸出】から【輸入】へと貿易実務をひっくり返しただけで、その次がみえず、戦略がフリーズしてしまっているわけだ。

 商社2.0は投資業務

metamorworks/istock
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 そんな折、私は10年前に拙著「ブランドで競争する技術」で、「商社は投資業務に軸足を移せ」「トレードに入っても産業は復活しない」と提言した。当時、この発想を受け入れてくれたのは財閥系某商社だけで、その他は「実感がもてない」と完全無視を決め込んだ。

 しかし、今、コロナのせいもあるが、アパレルが商社外しを行ったせいで、アパレルの資金繰りが極めて変則的な動きをしはじめている。つまり、利益がでても資金が回らないという企業が増えているのだ。
 さらに、あやまったQR (素材も含めた生産リードタイムを短くすること)が蔓延しているなかで、素材を備蓄し「縫製リードタイムを短くする」という世界基準のMDを採用したアパレルにとっては、さらに資金調達は複雑になった。多くのアパレルが、「およそ商品回転率は2.6回だから、、、」とどんぶり勘定で資金調達を行い、パンデミックが起きてと即死するということが起きている。

 

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