廃棄パンや災害備蓄品を「ビール」にアップサイクル!フードロス削減の新たな選択肢とは

聞き手:中原 海渡 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
構成:玉木 成子(フリーライター)
Pocket

製造の外部委託をやめ醸造所を新設

 Beer the Firstの社長を務める坂本氏は、かつて勤めていた食品商社で輸入部門と国内卸部門を経験したという。「国内卸を担当していたときに、農家や加工所、メーカーなどで多くの商品が廃棄される場面を見たことがあり、いたたまれない気持ちになった」と坂本氏は当時の思いを語る。とくにわずかな傷があるだけで規格外になる農作物に強く違和感を覚えたそうだ。その後、もともと好きだったビールを商材にした仕事を始めようと検討するなか、フードロス問題を掛け合わせることで本事業の構想に至ったのだと坂本氏は説明する。

 坂本氏は当初、フルーツをビールの副原料として再利用しようと検討したが、すでに同様の事業を行う会社は多くあったため断念した。代わりに糖質を多く含むパンや米、麺に目を付けたという。事業を開始して営業をかけると、それらを扱う外食企業からは「フードロス対策でお菓子にアップサイクルしようという提案は多くもらうが、ビールへの転換は珍しい」と好意的な反応や耳を傾けてもらえるケースが多かったと坂本氏は話す。

 Beer the Firstは創業から右肩上がりに業績を伸ばす一方で、2つの課題を抱えている。それは製造を外部委託していることにより安定供給が難しい点と、利益率が低い点だ。これらを改善するため、年内に自社のブルワリー醸造所を開設する予定だという。

 「40坪程度の中規模な醸造所を構想しており、自身の地元である神奈川県で居抜き物件を探している。リノベーションを行う設計士には、有名建築家の隈研吾氏を迎える予定だ」と着々と準備を進めていることを坂本氏は明かす。

 クラフトビールのマーケット規模も課題の1つだ。日本のビール市場においてクラフトビールの売上が占める割合は約2%と(アメリカは約20%)、日本人はクラフトビールへの関心が極めて低い。坂本氏は「クラフトビールそのものの人気が上がればアメリカのように強気な価格設定が可能になり、利益率もあがるだろう」と語る。

 こうした課題はあるものの、Beer the Firstは企業のSDGsへの取り組みに貢献しながら、提携先を着実に増やしている。坂本氏は「当社は製造ロットが大きくないため、小規模な会社でもスモールスタートできる点が強みだ」と話す。

1 2

聞き手

中原 海渡 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

神奈川県出身。新卒で不動産仲介業の営業職に就き、その後ライター/編集職に転身。

2022年10月に株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。ダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集部記者として記事執筆・編集を行う。

趣味は音楽鑑賞(ポップス/ロック)と、最近はレコード&カセット収集。フィジカルメディアが好きで、本も電子書籍より実物派。

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態