「服を物々交換する店」運営元に聞いた、これからのエシカルファッション

中原 海渡 (ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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懸念は、店舗運営の再現性が低い点

closet to closet店内の様子
closet to closet店内の様子③

 こうした古着の「物々交換」という形式で懸念されるのが流通量の多いファストファッション商品の取り扱いだが、三和氏は「当然、持ち込まれるアイテムの中にはファストファッションもあるが、多くはない。お客さまは部屋のクローゼットに眠っている衣服を持ってきてくださるので、最近のトレンドではないものが多い」と述べる。

 続けて、三和氏は「closet to closetの運営を続けていくうえで、とくに大きな壁は感じてない」としつつも、店舗運営の再現性が低いことを一つの懸念点として挙げている。もし今後、closet to closetの普及によって物々交換という形式のアパレル店が市井に浸透した場合、同様の店を出そうと思っても、誰でも簡単にできる形態ではないと感じているそうだ。

 三和氏は今後、closet to closetの規模を大きくしたり拠点を増やしたりする予定はないが、新しいサービスの思案は続けたいという。現在、三和氏が力を入れるのは、古着にクリーニングやリペアを施す「アップサイクル商品」の展開だ。取り組みはすでに行われていて、三和氏が思案・企画したリメイク古着を、外注のリメイククリエイターが製作、オンラインショップで販売している。

アップサイクル商品
アップサイクル商品
アップサイクル商品
アップサイクル商品②

 しかし現状では、アップサイクル商品の素材となる商品にブランドタグやブランドデザインがある場合、商標権侵害にあたってしまうなどの問題があり、三和氏は製作方法や販売方法を模索中だという。「現状の法体制ではアップサイクル商品を販売しやすい状況にあるとは言えないが、ゆくゆくは法改正されるだろうと見込んでいる。きたる時代に備えてしかるべき製作方法や販売方法を検討したい」と三和氏は話す。

 こうした取り組みを続ける三和氏の思いとして、衣類の廃棄問題への危機感以上に、ファッションを「楽しみたい」という意識が強いという。

 「古着を通じて生産者へのリスペクトを感じたり、衣服の歴史を汲み取ったりしてファッションを楽しんでもらえたら本望。服が循環する拠点の1つとしてcloset to closetを機能させたい。まったく新しい衣服を生み出すというよりも既存の衣服を使って、再定義した価値観をお客さまに伝えていく」(三和氏)

 冒頭で説明したように、百貨店からの出店依頼もあり、多くのメディアに取り上げられたことでcloset to closetの認知度が着実に高まってきている。こうした取り組みによって、エシカルファッションに対する共感が今後広く浸透していくかもしれない。

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記事執筆者

中原 海渡 / ダイヤモンド・チェーンストア 記者

神奈川県出身。新卒で不動産仲介業の営業職に就き、その後ライター/編集職に転身。

2022年10月に株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア入社。ダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集部記者として記事執筆・編集を行う。

趣味は音楽鑑賞(ポップス/ロック)と、最近はレコード&カセット収集。フィジカルメディアが好きで、本も電子書籍より実物派。

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