ハイブリッド3PLに販売物流プラットフォームの構築…高騰する物流費への正しい対応方法とは

河合 拓
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物流問題を解決する一連の手法

imaginima/istock
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 ちなみに、3PLに切り替えた某有力セレクトショップ企業は、フェデックス・エクスプレスの倉庫にアウトソーシング。増え続ける余剰在庫が別棟の荷物置き場まで満たんになり、増設しなければ余剰在庫の置き場がない、という状況のようだ。

 この状況を鑑みて私が提案するのは「ハイブリッド3PL」である。ハイブリッド3PLとは、自前の倉庫と3PL先をハイブリッドで使うものだ。パフォーマンスや余剰在庫の置き場も決め、仮にこれ以上置けなくなった場合は、ファミリーセールで叩き売るか、マルイやオンワードなどの企業に助けてもらい、一気に在庫を売り切ってしまう。

 さらに、物流の人件費を大きく上げることで、人の流出をとめ、流入を増やす。その人件費は3PL業者の人件費よりもちょっと高い程度にしておくことが大事だ。

 次に、経営トップは、仲の良い企業と販売物流のプラットフォームをつくり、積載率をあげてゆくとともに、オンワードの真空プレスなどを使い、ハンガー納品で必要な1品あたりの物量を最小化していく。今、販売物流の積載率が40%程度といわれているので、これが最大化されるとともに、これまでよりも高密度で商品を積載することができる。

 さらに販売物流の中でもラストマイル物流に関しては以下の取り組みを提案する。消費者に対して、必ず①近くのコンビニに送る、②XX日のXX時であれば、自宅に送るの二択にし、XX日に受け取ることができなければ再配達料を徴収することを明記する。これで再配達に関する諸問題は解決する。 

いずれにせよ、人材の問題が最もクリティカルなのだから、

  1. 人材の報酬を上げる
  2. 人材配送の歩留まりをゼロにする。ルールを破る人からはペナルティをもらう

でよいはずだ。

  ただ、今後ECがますます拡大する(EC化率は中国は60%、日本は20%以下)なか、物流問題はどんどん難しくなっていく。僭越ながら、的を得ていない改革など、なんの効果もない。将来は、無人自動車による配送、ドローンによる配送など、今までとは全く違う配送と、外国人に大量にワーキングビザを発行し、この手の仕事を任せる日もくるだろう。物流だけは、残念ながらメタバースの世界が入り込む余地はないのだ。

 

プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

 

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