DX失敗A級戦犯の隠蔽手法とスマートファクトリーで激変するアパレルビジネスの姿とは

河合 拓
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「河合さん、このページは削除してくれませんか?」
そのページには、これまでのIT投資、およびマイナスROIの総額が1億円を超えている事実が克明に記載していた。調査をしたのは私であり、そのページを隠蔽しようとしたのは副社長だ。
驚くべきことに、取締役全員がこの数字を全く見ていないばかりか、その副社長とデジタルベンダーは通じており、役員会を通さずとも大きな金が平然と動いていたのだ。
この会社には、私がコンサルティングに入る前に「人権派コンサルタント」と称する人間が出入りし、こうしたガバナンスの効かない金の動きを許し、ROIが10年以上続けてマイナスにも関わらず、現金をたれ流している事実さえ分析できない、そんなレベルの支援をやっていた。
今回は、こんな人災に起因するアパレル産業の崩壊の1つの大きな象徴である「PLMの大失敗」とそこにみる、本質的な企業変革の手法について解説したいと思う。

putilich/istock
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「サプライチェーン内に複数のPLMが入ることは当たり前」
ではない

  人災によりアパレル産業が破壊されつつある。その最たる象徴が「PLM製品の開発・設計・製造といったライフサイクル全体の情報をITで一元管理し、収益を最大化していく手法)の導入失敗である。PLM導入で失敗を繰り返しているのは、サプライチェーンマネジメント、すなわちCPFR (シーファー)をしっかり理解していないからだ。今、日本のアパレルでPLM導入に成功した企業は数件しかない理由もそこにある。

  あるベンダーは私にこういった。「私は他産業で、25年にわたるPLMの導入経験がある。PLMがサプライチェーン内に複数入ることは当たり前で、自分の経験からいっても正しい」。

 他産業の垂直統合されたサプライチェーンにPLMが複数入ることは確かにある。しかし、それは「モジュール化開発」といって、例えば、自動車産業であればエンジンをつくるためのサプライチェーン、プラットフォームを組み立てるためのサプライチェーンなど、いくつかの生産が分業体制になるモジュール化されているためだ。したがって、それぞれの組み立てにPLMが複数はいるのである。

 しかし、アパレル産業にモジュール開発はない。一つのラインで、裁断、縫製、洗い、検品と一気通貫で服を作る。そして、日本独特の商習慣として、特に原料生産では染色をするためだけに加工を外注する、できあがった糸でガーメントを作るために外注に出すなど、サプライチェーンの多段階において異なる企業群による「組み立て連鎖」が流れているのだ。

 つまり、エンジンやタイヤを別々のエンティティが生産を受け持つ自動車産業とはサプライチェーンが全く違うのである。そして、アパレルのサプライチェーン各領域において「5枚複写の専用伝票」がはびこっているのは、それぞれの会社が、それぞれの利益誘導をして個別最適に陥っているからだ。自社の売上至上主義をクライアントに押しつけ利益をむさぼっているベンダーの責任なのである。


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