超低金利の終焉がM&Aを誘発する理由とは 高まる金利先高観に備えよ
超低金利の終わりの始まりとM&A

次に中長期金利の先高観。
日銀総裁の交代を機に、
円金利の上昇局面は随分久しぶりのこととなります。
そこでまず気になるのは、負債過多の企業。筆者が上場小売企業を点検してみたところ、低収益かつ負債過多という企業は限定的と思います。さすがにバブル崩壊後とは異なります。影響があるとしても、一部の小売企業と外食企業にとどまるのではないでしょうか。
むしろ金利先高観が高まる局面で、多数派である財務健全な企業がどのような財務戦略をとるのかが気になります。
金利先高観が強まる局面(予想実質金利のマイナス幅が縮小する局面)へ移行する際、教科書的には借入を増やして投資をすることが理にかなうはずです。
これまで負債による資金調達を抑制してきた財務力の高い企業が、借入調達を増やして、設備投資とM&A(合併・買収)を一気に加速し陣地を固める。金利先高観は、このような動きを誘発するのではないかと考えます。小売業界に1、2社そのような戦略的な企業が登場するだけで、大きな衝撃を生むのではないでしょうか。
超低金利の終わりの始まりが、企業ごとの戦略性を問い、業界地図を塗り替える。そんなシナリオを筆者は頭の片隅におきながら、企業動向を追っていこうと思います。
正夢になるでしょうか。
プロフィール
椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師
1 2
椎名則夫の株式市場縦横無尽 の新着記事
-
2025/03/10
西友買収でトライアルは首都圏をこう攻める?アナリストが評価する意外な点とは -
2025/01/10
24年もっとも上昇/下落した小売株上位20!25年の小売株、4つの注目点とは -
2024/12/16
VAIO買収のノジマ M&A巧者の成長戦略と10年で株価6倍の理由 -
2024/09/24
クシュタール買収提案でセブン&アイがいますぐすべきことと3つのシナリオとは -
2024/08/19
円安修正で国内成長力に再注目!良品計画に広がるチャンスと課題とは -
2024/07/08
アインHD、フランフラン買収で変わる?株主総会の争点とは
この連載の一覧はこちら [63記事]

イオン・グループ,ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2025-03-10西友買収でトライアルは首都圏をこう攻める?アナリストが評価する意外な点とは
- 2025-03-04GUがアンダーカバーとの新ライン「UG」を始めるスゴいねらいと効果
- 2025-03-11アパレルの離職率低下を防ぐためにやるべきこと、やってはいけないこととは
- 2024-05-02イズミが西友の九州事業を買収、激動の九州小売マーケットを制するのは?
- 2025-03-12ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由_過去反響シリーズ
- 2023-08-04どうなる「ツルハ」と「クスリのアオキ」 イオンの出資先で問われるガバナンスと再編の予兆
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2024-09-3048兆円市場の各社のシェアがわかる!食品小売、市場規模&占有率2024!
- 2024-07-10イオンVSセブン&アイ 株主優待が示す2社の「大きな差」とは
- 2013-12-02年間2ケタ以上のNSCを開業!地域密着の商業集積めざす=イオンタウン 大門 淳 社長