「EC、ライブコマース、超低価格」スタートアップ3種の神器で、アパレル産業主役交代の衝撃
工場とEC をダイレクトに結び、リアル店舗を持たない

次に流通だ。が、サプライチェーンは昔、「バリューチェーン」(付加価値連鎖)などと呼ばれ、本来、流通工程が進めば進むほど、製品(製造されたもの)から商品(販売するもの)へ移り変わる課程において付加価値が付くはずなのだが、現実は、霜降り牛の脂のような無駄なコストが増えている。バリューチェーン、ならぬ、コスト増加チェーンである。
デジタル化についても、PLMという流通をデジタル化するツールが入らない、あるいは、加速度的に増える各種システムの「サブスクフィー」(月間使用料)によって、逆に流通コストを高騰させているのは、幾度も説明したとおりである。さらに、店舗に目を向ければ、今の先進国でリアル店舗に在庫を持ち好立地でビジネスをやって利益が出るのは、ユニクロなど1兆円を超える世界企業だけだ。彼らの物流スケールは、チマチマと1000枚単位のビジネスをやってきた日本のアパレル企業の人には想像がつかないだろう。私は、日本の卸売業が「QR(クイックレスポンス)で日本のアパレルを助ける」などとメディアで発言しているのを見るたび、「売れない企業の少量発注にお付き合いしているだけではないか」と感じている。
これに対して、スタートアップ企業はリアル店舗を持たず、ほぼ100%がECである。ECは確かに「客の情報をモールに奪われる」「上代の上前をはねられる」「自社ECでは十億単位のCPA (顧客の獲得コスト)がかかる」といった短所を抱える。だから、戦略無き企業が安易にモールに出たり自社ECを立ち上げても、米国で起きた「Death by Amazon」のような羽目(ECモールに客を奪われ死滅に追いやられる)になるか閑古鳥がなくかのいずれかだ。
しかし、それは、流通や販管費が異常に高い企業の話だ。販管費も流通コストも半分以下のスタートアップ企業では、モールに出店しても何ら問題ない。むしろ、こうした企業にはVC (ベンチャーキャピタル。スタートアップに投資をする金融機関)が、「お金を入れさせてください」と10億円単位の札束をもっておかげ参りに来るぐらいだ。
早くも3刷!河合拓氏の新刊
「生き残るアパレル 死ぬアパレル」好評発売中!
アパレル、小売、企業再建に携わる人の新しい教科書!購入は下記リンクから。




河合拓のアパレル改造論2021 の新着記事
-
2022/01/04
Z世代の衝撃#4 Z世代を追えば敗北必至!取るべきトーキョー・ショールーム・シティ戦略とは -
2021/12/28
Z世代の衝撃#3 既存アパレルが古着を売っても失敗する明確な理由とは -
2021/12/22
インフルエンサー・プラットフォーマー「Tokyo girls market」驚異の戦略とは -
2021/12/21
プラットフォーマー起因の歪な過剰生産が生み出す巨大ビジネス、SheinとShoichi -
2021/12/14
Z世代の衝撃#1 ライブコマースで「インフルエンサー・マーケティング」が失敗する衝撃的理由 -
2021/12/07
TOKYO BASEがZ世代から支持される理由と東京がショールーム都市になる衝撃
この連載の一覧はこちら [56記事]

関連記事ランキング
- 2025-04-21従来型のカイゼンは限界に……賃上げをめざすアパレルチェーンが急ぐべき構造改革の要諦
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2025-03-04青森ダウンなどSANYOCOATの10~20万円の高額アウターが飛ぶように売れる理由
- 2025-05-12ユニクロとしまむら、フェーシング数量に見るロジスティクスと商売哲学の違い
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販
- 2024-06-19インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは
- 2025-04-24業態別 主要店舗月次実績=2025年3月度
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2025-03-19日本人の服がこの10年で「ペラペラ」になった本当の理由_過去反響シリーズ
- 2023-01-11セールしない、余剰在庫もないアパレル「アルページュ」 会社もお客も「幸福な」理由