既存店全店を改装、小商圏高占拠率の店舗網を拡大=マックスバリュ東海 神尾 啓治 社長

聞き手:大木戸 歩
構成:田中 浩介
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「ザ・ビッグ」の収益改善はPB拡充がカギ

──一方では、「マックスバリュ」のDS「ザ・ビッグ」への業態転換を進めています。

神尾 13年2月期にオープンした「ザ・ビッグ」4店舗のうち、3店舗は既存の「マックスバリュ」を業態転換したものです。「ザ・ビッグ」は今年7月末までに静岡県に7店舗、山梨県に5店舗を展開するに至っています。

 当社の店舗数が最も多い静岡県内では、低価格競争が激化するなど競争環境が変化しており、ドミナント強化策のひとつとして、一部の「マックスバリュ」店舗を「ザ・ビッグ」に転換しています。ただ、「ザ・ビッグ」は品揃えを絞り込んでいるため、お客さまのニーズに対応しきれていない可能性があります。ですから、基本はふだんの食生活に必要な商品を揃えた「マックスバリュ」のドミナントが強固なエリアに、コモディティ商品を低価格で販売する「ザ・ビッグ」を配置し、お客さまの使い分けを促し、シェアアップを図っていきたい。

 他方、山梨県内では現在、「マックスバリュ」と「ザ・ビッグ」合わせて8店舗を展開していますが、甲府盆地にある5店舗は業態転換により「ザ・ビッグ」にしました。同エリアは価格競争が非常に激しいエリアのため、「ザ・ビッグ」の出店を進めていく考えです。

──11年5月、山梨県中央市に「ザ・ビッグ」1号店をオープンしてから2年以上が経ちました。「ザ・ビッグ」の収益モデルは出来上がりつつありますか。

神尾 まだ損益トントンですね。「ザ・ビッグ」の粗利益率は17.5%で、経費率もほぼ同率です。当面の目標は粗利益率を18%、経費率を16%とし、営業利益率を2%にすることです。粗利益率を引き上げるためには、プライベートブランド(PB)「トップバリュ」の売上高構成比率を高めなくてはなりません。「ザ・ビッグ」はDSですから、低価格かつ粗利益率の高い価格訴求型PB「トップバリュ ベストプライス」の品揃え拡充が大前提となります。

 しかし、まだ展開アイテム数が少ないため「ザ・ビッグ」のPB売上高構成比率は11.1%に過ぎません。売場での訴求を強めることにより、今期中には20%にまで引き上げる計画です。

──「ザ・ビッグ」の経費率16%を実現するには、どのような方法がありますか。

神尾 売上高を伸ばすことによって、相対的に経費率を引き下げることは可能です。実際に、週2回のチラシ配布を見直すなど、改善余地はあります。しかし現状では「ザ・ビッグ」の認知度がまだ低いため、チラシで集客する手法を当面は継続実施する考えです。

──プロセスセンター(PC)を活用して、ローコスト運営に努めていますね。

神尾 もともと当社はインストアの比率が高く、イオングループの中でも労働分配率が高い水準にありました。これを改善するため、PCで生鮮食品を一次加工する仕組みを整備し、売場のSKU数を削減するなどのオペレーション改革を推し進めてきました。水産部門と畜産部門においてインストア加工商品を絞り込み、アウトパック商品を拡充したのです。たとえば水産部門では、塩干物やしらすをアウトパックに切り替える一方、インストアにおいては切り身や刺身など鮮度を求められる商品の加工に集中するようにしました。

 PC活用に合わせて、店舗のバックヤードの縮小にも取り組んでいます。新規出店する際には、バックヤードの比率を縮小し、建物全体の面積を小さくして初期投資額の削減を図っています。以前はバックヤード比率が30%前後を占めていましたが、現在の新店は23%前後にまで縮小しています。

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