「勝ち組」企業と手を組み強いチームをつくる=アークス 横山 清 社長

聞き手・構成:大木戸 歩
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21世紀は、今までできなかったことを実現していく時代

──すでに北海道、青森県、岩手県では食品市場の3割弱のシェアを持っていますが、今後はSMだけでなく、コンビニエンスストア(CVS)やドラッグストア(DgS)など異業態との競争になります。

横山 従来は、小商圏で商売するSMがあり、その周辺に総合スーパー(GMS)などの大型店がある…というかたちでした。しかし、かつては食品市場でそれなりの存在感があったGMSは、数年前にピークアウトした感があります。それに代わって俄然、変身して食品市場を蚕食しているのがCVSです。

 食品を扱う業態の中で、これまでもCVSは競合ではありました。しかし、本格的に競合対策に取り組む相手とはみなされてこなかった。それが今は、本格的に対策をしなくてはいけないというように、状況はガラリと変わってきています。

 今、都市部では四つ角のうち3つの角までCVSで埋まっているような状況です。

 大手チェーンの大型店が出店したときに受ける、地元の中小SMのショックは、「心筋梗塞」のようなものです。少し体力の弱っている企業は、市場から脱落してしまう。そうしてその市場に残った企業間で、再びある程度の均衡ができます。土日は大手の集客力が高くても、平日は取り返せるとか。革新的なことではなくても、対応策がありました。

 一方で、CVSとの競合によるダメージは「糖尿病」のようなもの。自覚症状のないうちに、ジワジワと売上を奪われて、気がついたら身動きが取れなくなっている。今はこうした現象が顕著になってきていますから、CVSとの競合対策も考えていかなくてはいけません。

 店のそばにあって、食品を扱う業態はすべて競合です。DgSも、ホームセンターも、最近ではガソリンスタンドだって食品を売っています。居酒屋も昼食の時間帯に弁当を販売している。さらに、アマゾンのようなインターネット通販や、小売業各社のネットスーパーが、これから本格的に競争相手になってきます。何かが消えたら、次には別の競争が生まれる。終わりはありません。

 ただ、プロセスはケースによってさまざまだとしても、原則的には必要な売上と利益を確保できる企業が生き残るわけです。しかし、革新的に生産性を改善できるような技術は、今のところまだできていませんから、これからの課題ですね。

──14年4月に消費税率が8%に上がり、翌15年10月にはさらに10%に引き上げられます。増税によって消費者心理が冷え込めば、小売業界で低価格競争が再燃する可能性があります。

横山 集客力向上のために仕入れ原価を下回る価格で販売する「ロスリーダー」として、一時的な安売りをすることは可能でしょう。ただし、それは販売のテクニックにすぎないわけで、理由のない安売りは続くはずがありません。

 50年前に私が商売を始めたころは、「(競合店と)1円の差があると、お客さまは100メートル動く」と言われていました。当時のお客さまは、そのくらい価格に敏感で、安さを求めて買い回りをされた。しかし今は、10円くらいの差ではお客さまは動きません。そうかと言って、低価格訴求をしなければ集客もできません。そこで各社が今、まなじりを決して低価格競争をしているわけです。

 「ディスカウントストア(DS)が台頭してきているが、どう対抗するか」と聞かれますが、DSチェーンとて同じ“地球人”です。特別な仕組みを持っているようには見えません。しかも、収益力もわれわれのほうが強い。さらにDSとわれわれSMを比較して、どちらが地域に密着した商売をしているかと言えば、SMに優位性があるのではないでしょうか。

 ただ今後の消費増税とインフレターゲット、あるいはにわかに問題になってきた中国の微小粒子状物質(PM2.5)による大気汚染の問題などによって、今後は価格の体系が大きく変わる可能性があります。ですから、状況に合わせて取るべき価格戦略を考えなくてはいけません。

 こうした戦乱の時代にあって、激しい戦いが続けば続くほど企業淘汰が進んでいくでしょう。その中で生き残るという思いで、一生懸命やっています。

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