アフターコロナをアパレル産業が生き抜くための起死回生策「マルチプラットフォーム戦略」の全貌

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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ZOZOも失敗!
ものづくりをなめてはいけない

 理由はシンプルで、その生産会社は事業部の「いいなり会社」になり、事業部の言うとおりに右から左に発注を流しているだけだからである。酷い例になれば、その生産会社は商社に発注し、なんのための生産管理会社なのかわからない状況になっている。なぜこのようなことになっているかといえば、経営にリーダーシップが無く組織設計が悪いからだ。本来、生産機能というのは事業部からのリクエストに対して逆提案をしたり、新しい生産拠点を開発したり、全く新しい発想で生産フローを組み替える機能が必要で、そのためには、事業部と並列、時には事業部以上の権限が必要なのである。

 また、適切なKPIを設計できる会社にも、お目に掛かったことがない。酷いケースになると、「バングラデッシュで100枚二週間でつくれ」とムチャを生産会社に投げ、同じ組織からの上司からの命令だということで、仕入れ先や商社を間に入らせて、簿外在庫や口約束による過剰発注をしてFOB(海外仕入れ単価)に加えるということもやっている。

Photo by GCShutter
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 日本でPLM (Product Lifecycle Management パッケージ)が入らない理由は、こうしたいびつなバリューチェーンをデジタル化し、見える化すれば、こうした数々のルール違反が白日の下にさらされるからだ。本来、生産側は、「それは無理だ、代わりにこういうことをしてほしい」とか、在庫を事業部が残した場合、その在庫責任を事業部につけるルールが必要なのである。だから、自社内に生産会社をもっても、自社(売場)の都合のよい形でものづくりを軽視するため、このようなドタバタ騒ぎが起きるのだ。ZOZOが以前、スーツを二週間で作りますと大風呂敷を広げたが、最後は納期が2ヶ月以上になったことを思い出してもらいたい。「ものづくりをなめてはいけない」ということである。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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