転換点迎えたセブン&アイ、新社長が示した成長戦略とは

北野 裕子 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集者)
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カナダのコンビニ大手による買収提案で揺れるセブン&アイ・ホールディングス(東京都、以下:セブン&アイ)の新体制が始動する。セブン&アイは6日、井阪隆一社長が退任し、社外取締役のスティーブン・デイカス氏が新たに社長に就任すると発表。あわせて、イトーヨーカ堂(東京都)を含むスーパーストア(SST)事業の売却先が決定したことも明らかにした。同日開催された記者会見には、井阪社長、デイカス氏が揃って出席。今後の経営方針について何を語ったのか、会見の内容を詳報する。

9年ぶりに体制刷新

セブン&アイHDの社長を退任する井阪隆一社長(左)と、新たに就任するスティーブン・デイカス氏(6日、東京都内)

 「国内事業の最適化に一定のめどがついた。今後さらなる成長を実現するためには、今までとは異なる施策が必要になるフェーズに入った」。6日午後に開かれた記者会見で、井阪社長は社長交代の理由について、こう説明した。

 セブン&アイは同日の取締役会で、社長の人事異動について決議したと発表。デイカス氏は5月27日に開催予定の定時株主総会の承認を経て正式に就任し、井阪社長は特別顧問に就く。カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard:以下ACT)より日本円にして約7兆円の買収提案を受ける中での経営体制刷新となった。

 トップの交代と同時に、動向が注目されていた“非コンビニ事業”の行方についても決着がついた。セブン&アイは2024年10月、イトーヨーカ堂やヨークベニマル(福島県)などを含むSST事業を統括する中間持株会社のヨークホールディングス(東京都、以下:ヨークHD)を設立している。このヨークHDの戦略パートナーを招聘するため一部株式の売却をめぐって入札が行われていたが、セブン&アイは6日、米投資ファンドのベインキャピタルが設立する特別目的会社に8147億円で譲渡することも取締役会で決議したと発表した。セブン&アイが35%の持株分を再出資する契約で、株式の保有割合はベインキャピタルが60%、セブン&アイが35.07%、創業家が4.93%の比率となる。91日に効力が発生する予定で、新体制の下でIPO(新規株式公開)をめざすという。

 井阪社長は会見で「2021年に5カ年計画の中期経営計画をスタートさせてから、過去の総合小売業をめざす方向からの転換を何よりも重視してきた」と振り返り、国内外のコンビニエンスストア事業に注力してきたと説明。SST事業の戦略パートナーが決定したことも受け、「今こそが経営交代の最適なタイミング」として、2016年から約9年務めてきた社長を退任するとした。

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記事執筆者

北野 裕子 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集者

兵庫県出身。新聞社を経てダイヤモンド・リテイルメディアに入社し、ダイヤモンド・チェーンストア編集部に所属。

趣味は国内の海や湖を巡り、風光明媚な場所を探すこと。おすすめのスポットは滋賀県の余呉湖、山口県の角島大橋。

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