GUがアンダーカバーとの新ライン「UG」を始めるスゴいねらいと効果
ファーストリテイリングは2月28日、デザイナー高橋盾氏がてがけるブランド、UNDERCOVER(アンダーカバー)とGU(ジーユー)の新コラボライン「UG」(Uの下にアンダーバー)を3月14日からスタートすることを発表した。この取り組みが、ファーストリテイリングにとってどんな意味があるのかを解説したい。単なるコラボではないのである。
ブランドとは一見真逆のユニクロ、GU
アパレルのブランドは、そのブランドが持つ雰囲気、すなわち、歴史や希少性、デザインに独自性があり、他社と明確な差別化がされていることが大事だ。
これに対し、ファーストリテイリングのユニクロは真逆の方向を志向した。すなわち、ベーシックでどこにでもあるデザイン、ベーシックで着回しのよい衣料品である。価格も一般アパレルの20~30% は安く抑えているだけでなく、顧客が集まる週末はさらに価格を下げるというダイナミックプライシング(顧客の購買動向によって価格を柔軟に変える)を採用している。また、デザインをベーシックにする代わりに、色展開を豊富にすることで売場の価値と商品の訴求力を高めることで、この最も大きな「ベーシックセグメント」を独り占めするほどの強さを見せている。
そのユニクロが時に思い出したようにやりだしたのが、「+J」のようなコラボラインだ。しかし、あれだけ注目を集めた「+J」も21年秋冬シーズンをもって終了してしまった(25年1月より、40周年記念復刻コラボを発売中)。残っているのは、「Uniqlo:C」というSPA (自社の責任で自社のブランドを冠して製造した商品)と、JW Andersonぐらいだ。ユニクロのコラボ作戦は必ずしもうまくいっていないのではと思っている人もいるだろうし、一方ではランダムに行われるコラボがブランドの魅力を高めていると見ている人もいるだろう。
いずれにせよユニクロ、GU(ジーユー)を展開するファーストリテイリングが抱える2つの命題は、のどから手が出るほど欲しい「ブランド」をどう獲得するか、それをどのようにグループに組み込むかということだ。
アンダーカバーとのコラボでねらう
低価格ファッション領域の圧勝
そのファーストリテイリングが今回新たなコラボラインを世に放つ。ストリートブランド「UNDER COVER」(アンダーカバー)のデザイナー高橋盾氏との協業でスタートさせるGUの新コラボライン、「UG」(Uの下にアンダーバー)である。GUとアンダーカバーは断続的にコラボ商品を発表してきたが、今回コラボ新ラインというかたちでスタートすることになった。
海外展開も本格的にはじまったGU は現在、約3000 億円の売上をたたき出すモンスターブランドに成長したが、そこから1兆円を狙うには、ZARA 、H&M、 SHEIN(シーイン)などと競争せねばならず、また、当然ながら勝たねばならない。だが現時点では、GUが明確にこれらの外資SPA に勝っている部分があるわけではない。
河合拓氏の新刊、大好評発売中!
「知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!」
話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!
河合拓のアパレル改造論2025 の新着記事
-
2025/03/11
アパレルの離職率低下を防ぐためにやるべきこと、やってはいけないこととは -
2025/03/04
GUがアンダーカバーとの新ライン「UG」を始めるスゴいねらいと効果 -
2025/02/25
3coinsのパルが初任給30万円に!アパレルが改善したいもう1つの給与制度とは -
2025/02/18
ユニクロと競争せず“正しい”戦略ポジションを取っているアパレルとは -
2025/02/11
「あえて着ない」人が増加中 スーツ業界の復活はあるのか?
この連載の一覧はこちら [5記事]

ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2025-03-12ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由_過去反響シリーズ
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2025-03-11アパレルの離職率低下を防ぐためにやるべきこと、やってはいけないこととは
- 2020-02-18日本のアパレルの非効率と非常識を 「なんとかする」のが商社の仕事
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2021-11-16「ラルフローレン」と「ユニクロ」が同じである理由とZ世代に対する誤解が生む悲劇
- 2022-03-15アパレルをオワコン化させているのは「人災」であるこれだけの理由
関連記事ランキング
- 2025-04-21従来型のカイゼンは限界に……賃上げをめざすアパレルチェーンが急ぐべき構造改革の要諦
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2024-06-19インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは
- 2025-02-18ユニクロと競争せず“正しい”戦略ポジションを取っているアパレルとは
- 2025-03-19日本人の服がこの10年で「ペラペラ」になった本当の理由_過去反響シリーズ
- 2025-03-12ユニクロ以外、日本のほとんどのアパレルが儲からなくなった理由_過去反響シリーズ
- 2025-04-02「#ワークマン女子」から「Workman Colors」へ 売場・商品はどう変わった?
- 2022-04-19この夏日本アパレルを襲う「HIGG Index」と間違ったD2Cの解釈が起こす悲劇
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販
- 2023-09-26無印良品の一部となる三菱商事ファッションとユニクロ:Cの成功が意味することとは