儲かるアパレル、儲からないアパレルの違いが判明!「TOC」をわかりやすく解説!

私がある1冊の本と出会ったのは、今から10年以上も前だ。この本は、当時QR (Quick Response: 素早く追加発注を行い、売逃しや過剰在庫を避ける手法のこと)に沸き立っていた産業界に魔法の杖の如く寄り添い、誰もがQRこそMD(商品政策)の究極の姿であると考え、SPA (製造小売業)のコンセプトへ発展してゆく。当時、QRとSPAは非常に分かりやすかったため、このコンセプトは一気に産業界に広がっていった。
その本は「ザ・ゴール」。イスラエルのゴールドラット博士が書いた書籍だ。私も、食い入るようにこの本を幾度も読み、そして、この本の中核をなすTOC (Theory of Constrains: 制約理論)と「ボトルネック」(飲料の口がぐっと絞られて小さくなっているところから、サプライチェーン上スムースな流れを遅れさせる要因)という言葉は日常会話に取り入れられるほど産業界のDNAに組み込まれていった。
しかし、私がこのTOCの話をMDと絡めて講演でおこなっても、会場は盛り上がらなかった。日本において、ボトルネックは「邪魔なもの」という短絡的な意味合いで片付けられており、全体のスピードは最も遅いボトルネックのスピードで決定づけられるという核心を付いたところまで掘り下げた理解が広まっていなかったためだ。
そこで、あらためて今日は、「ザ・ゴール」の執筆者であり、権威であるゴールドラット博士が生んだコンサルティング会社 Goldratt consulting の飛田基氏を招いてディスカッションをした。私自身、TOCの意味をキチンと理解しているかという疑問もあったし、何よりもこの対談が日本のアパレル業界にとって有意義なものになってもらえれば何よりだ。

生き残るアパレル、死ぬアパレルの違いは
河合 こんにちは。今日は、ディスカッションをする機会をえられ大変感謝しています。「ザ・ゴール」は、私の宝の一つですから、本当に何度読んだか分からないほどです。今日は、核心にせまる議論ができそうで、わくわくしています。それでは、宜しくお願いいたします。
飛田 よろしくお願いします。私も河合さんと議論できるのを楽しみにしていました。早速ですが、まずは、大きな利益を出しているファッションやアパレル企業と、そうでない企業の根本的な違いはどこにあるのでしょうか?
河合 アパレルビジネスは、大きく二つの脳が働いており、デザインやクリエイターなどが使う右脳。MDや経営者が使う左脳。このバランスがしっかりとれている企業は強いですね。逆に、今は大きく利益を出していても、その状態が強固なシステムによりサステナブルか否かは重要な視点です。
というのは、社長一人がこの部分を行い、社長以外はほぼ全員オペレーションばかりやっている会社は、なにか問題が起きると対応に時間がかかったり、下手をすると対応さえできないこともあります。ようは、属人的なのです。
私は、「アパレルは感覚も大事」だというところにあえて反論をしています。というのは、世の中の変化は非常に早く、私が改革に入った会社は「勝ちパターン」をもっていませんでした。こういう企業は、世の中のトレンドが少し変化しただけで、昔のやり方で直そうとし、いつまで経っても課題は放置されているということがあります。
飛田 なるほど、属人的ではなく、「科学的に経営と業務をせよ」ということですね。実は、当社も同じ考えをもっており、TOCを土台にした、実務で実証済みの「うまくいくロジック」が埋め込まれたソフトウエアをもっております。世界24か国で、多店舗展開する数百以上のアパレルチェーンが、当社のクラウドサービス使い、余剰在庫と機会ロスの撲滅に大きく寄与し、利益を伸ばしています。
河合 属人化されているMDをシステム化できるというのは凄いことです。今、多くのコンサル会社は、システムをつかってコンサルティングができないか四苦八苦していますが、私は広義な意味でコンサルティングは科学であるという信念に近いようなものを持っています。しかし、現実は、なかなかうまく感性と科学の融合ができない。標準化も、他の企業同士ならまだしも、同じ企業でありながら「隣の部署と一緒に仕事はできない」などといって、感情が先にきて標準化ができていないのです。
飛田 そこがチャンスなんです。部署内でできる改善は、相当進んでいても、部署と部署をつなぐのは簡単ではないので、劇的な改善効果がでることが多い。それが、TOCの根幹である「全体最適」のパワーです。
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