日本のアパレルがユニクロと勝負できる商品がつくれないリアルな理由

2020/02/11 05:35
河合 拓

前回、製品の開発・設計・製造といったライフサイクル全体の情報をITで一元管理し、収益を最大化していく手法であるProduct Lifecycle Management (PLM)が、日本のアパレルでは全然導入が進んでいないことを、ファーストリテイリングが自社工場を保有してこなかった理由と合わせて、解説してきた。今回は日本のアパレルの恥部とも言える、生産業務、バリューチェーン全体における構造的な問題を明らかにしよう。

Photo by GCShutter
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アパレルの生産はいまや97%が海外

 アパレル企業にも生産部は存在する。また、企業のいくつかは自家工場を持ち、海外と「直貿(ちょくぼう、直接貿易の略)」といって、商社を介さず直接取引をしている企業もある。

  しかし、これらには「但し書き」がつく。

 アパレル企業が保有する工場というのは、ほとんどが国内工場で、日本語で書かれた縫製仕様書をメールで送れば発注は終わりだ。これに対して、海外の工場に指示を出すには、英語、あるいは、現地の言葉に翻訳し、時に現地に出向いて細かなニュアンスも伝えなければならない。ここまでの機能を持つアパレルは極めて少ないし、生産については「伝えて終わり」というやり方から抜け出せない。これでは商品に魂が注入されることはないし、工場側の色が商品に反映されるのは当たり前だ。ブランド間に差別性がない理由はこんなところにもある。

  日本アパレルのオフショア生産(生産活動の海外移転)は、総投入量の97%を超え、もはや日本での生産はわずかに3%である。

  だから私は、「今こそMade in Japanだ!」と声高に叫ぶ日本の産業政策を聞くと、実態を分かっているのか、と呆れてしまう。20年前ならまだドイツの「インダストリ4.0 (人件費に関係なく生産を無人化、省力化し、自国内に生産を呼び戻す産業政策)」の実現は可能だったかもしれない。しかし、3%以下となってしまった国内生産現場で、何をすることができるのか。もはや、日本には生産基地そのものが存在しないのだいまさら、日本の貴重な経営資源を繊維産業に振り向け、更地に無人テキスタイル工場を設立するより、もっと他産業に投資をすべきだろう。時既に遅しなのだ。 

日本のアパレル企業のお粗末な直貿の実態

 このような状況の中で、海外工場を持つアパレル企業は日本でも数えるほどしかないし、直貿とはいってもその実態は、日本向けに商品出荷している海外工場が、ますます厳しくなるコストダウン要求、年ごとに減り続けている出荷数量に耐えられなくなり、商社機能を自らが持ち、工場が商社を飛ばして日本に支店を出す、あるいは、海外工場が日本人を雇い、日本企業向けにビジネス展開し、従来商社がやっていた業務を肩代わりしているだけなのだ。そして実態は、アパレルメーカーが単に外貨送金をしているだけというケースが多い。

 つまり、従来商社が抜いていたコミッション・コストが商社から工場に付け替えられているだけで、バリューチェーン全体はなんら効率化されていないし、結果として競争力のある商品は生まれていない。

  私は幾度となく、「アパレルがやっている『直貿』は、商社がやっているものの比では無い、もっと効率化は可能だ」と叫んでも、生産部は自らの仕事を守るため私の指摘に耳を貸さないままだ。また、商社も外されるのが怖いのでそのことを指摘しない。結果、ユニクロ圧勝の状態が続いている。日本企業は何も変わらない。

 

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