日本のアパレルがユニクロと勝負できる商品がつくれないリアルな理由

2020/02/11 05:35
河合 拓

 コスト高だけじゃない、寄生虫のように群がる中間流通の弊害

 日本のアパレルビジネスのバリューチェーンは複雑怪奇になっている。例えば200億円のアパレル企業(仕入れ額でいえば約100億円程度)でブランドは5つ、つまり一つのブランドの売上が20億円程度のアパレル企業のバリューチェーンのパターンの調査をしたことがあるが、その調達パターンは30以上におよび、そこに群がる下請け、孫請けなど、機能的価値のない企業も合わせると数千社に及んでいた。驚くことに、この調査をするため、私たちはアジアの工場を中国の北と南、東南アジアからさらに西へ数十という工場に聞き取り調査に行ったのだが、一緒にいった生産部の方達は、工場の内部に入り込んで細かく業務フローを分析することなく、ただショールームでお茶を飲んで話していただけだった。アジアの果てまで来て、呆れた話である。

  私は自分の目で見たものしか信じない。だから徹底的に現場に入り込み、管理者から受けるヒアリングは参考情報に留めている。こうして、リアルに調査を行った結果、例えば、「商品ができて日本に来るまで同じような検品業務を5回も繰り返している」「全く機能が無い会社が無数にバリューチェーンに群がり金の流れを複雑にしている」ことなどがすべて「見える化」された。こうした報告書を見た日本の管理者達は、これらの無数の企業が、それぞれ損益計算書を持ち、情報を複雑に回流させて利益を得ている実態をみて凍り付いたのは言うまでも無い。バリューチェーンは、いわば、サーロインステーキの「霜降り牛」のように脂肪太りし、コスト高となっているのだ。

  コスト高だけならまだよい。このように複雑怪奇な商品、情報、金の流れを、生産現場の真ん中にいる商社の人間でさえ把握している者は少ない。全くデジタル化が進んでいない商社業務の省力化をするための必要悪という側面はあるだろう。それにしても、なぜ、こうした状況を改善しようとしないのか、私は不思議でならなかった。

 例えば広東省の工場に発注をしたと思ったら、その工場は、工場とは名ばかりで、「降り屋」と呼ばれるテーブルメーカー(オフィスにテーブルだけを持ち、発注を東南アジアやバングラデッシュなどに投げ、生産管理をしているだけの企業)だったということは日常茶飯事で、今はどこで商品がつくられているのかすら分からない状況だ。サステナビリティの名の下に、こうした流通をRFIDで「見える化」する、などという技術屋がいるが、ゆがんだ流通が放置されたまま見える化しても無意味だろう。本連載で後述する「計画生産」を行えば、ハイテクなど使わなくとも流通はシンプルになる。

結局、寝技と人間関係に頼らざるを得ない現状

 また、海外の後進国では「キックバック」などは日常茶飯事だし、日本でも、未だに「契約」という概念がないアパレルも多い。例えば、アパレル側から正式発注書がくるのは納品が終わってからということもあるため生産現場では、「言った、言わない」が横行している。結果、生産ロットが満たされないようなムリな発注をされる、突然のキャンセルをされるなど、昔に比べれば少なくなったとはいえ、未だに「ア、ウン」の名の下に存在し、こうして発生した余剰簿価をFOB(海外工場の商品の出し値)に上乗せし輸入しているケースも珍しくない。

  このようなアパレル企業の99%は非上場企業なので、彼らの「後出しじゃんけん」ビジネスを防ぐ方法は、下工程(工場であれば、商社。商社であればアパレル)と人的関係を密にし既得権を作り上げるしかない。コンプライアンスの時代に、いまだに「銀座で一晩数十万円」という寝技も存在する。しかし、あえて、上工程を擁護することをいわせてもらえば、こうした寝技を使った関係を構築しなければ、いざというときにリスクを分かち合うことなどできないのである。

  一事が万事このような状況なので、綺麗でシンプルなバリューチェーンを前提としたPLMパッケージが導入できないのである。

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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