誰も語らなかったZARA圧勝の秘密3 AIによる予測がZARAには有益だが、日本企業には無意味な理由

2020/01/23 05:55
河合 拓

「誰も語らなかったZARA圧勝の秘密」第3回。第2回ではZARA圧勝の秘密は、ZARAが世界に配置した「数万人単位のトレンドリサーチャー」にあることを看破した。それでもいくつかの疑問は残る。変化するトレンドの追随と計画通りの生産の両立といったソフトとハードをどう融合させているのか、などという点だ。その秘密を解き明かしていこう。

Photo by borchee
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トレンドの追随と計画通りの生産、この両立をどう実現しているのか?

 解かねばならない2つ目の疑問は、
 ・頻繁に変化するトレンドの追随と、計画通りの生産の両立、
 ・あるいはあらかじめ準備し備蓄している原材料と変化するトレンドの両立、をどのように実現させているのかである。

  これは、生産オペレーションを、ソフト(トレンド)とハード(商品)を切り分けることで解決が可能で、私はこの仮説をセレクトショップから得た。日本のセレクトショップは買い切り型で、追加生産は希である。それでも、店舗フォーマットを変化させ、魅力的な売場を作り上げている。つまり、追加生産をしなくとも、投入された商品が魅力的であればQRは不要ということになる。

  日本のQRは、例えば、2/30.(サンマル) 梳毛のケーブルニットが流行れば、必至に30梳毛のケーブルニットをリピート生産する。しかし、日本中のアパレルが同じ流行を追いかけるため、「原材料がない」、「工場のキャパシティがない」、「サンプルを確認する時間がない」の「3ない」により、追加生産が困難になる。私が調査した複数のアパレル企業、商社の現場では、追加生産によって狙い通りの商品投入ができたのは、総投入量の20%程度で、80%は「やっつけ仕事」であるということも明らかになった。
  消費者心理に立って考えてみれば、例えば、モックネックが流行れば、晩夏であればカットソーでなくても、ニットのモックネックで良いはずだ。なぜ日本のアパレル企業は同じ素材、同じ工場にこだわるのか。
  同じ工場、同じ原料をひたすら追いかけ、やっつけ仕事を繰り返す日本のアパレルとは異なり、ZARAは消費者の購買心理を正しく把握し、変化するトレンドのエッセンスを計画稼働させ生産された商品に埋め込むことで、「移り変わるトレンド」(ソフト)と「計画通りの素材活用と生産」(ハード)を両立していることになる。

 わかりやすく言えば、イチゴのマークが流行っているとしたら、初夏はカットソー、盛夏はTシャツ、そして、晩夏は薄手のニットで、イチゴマークを入れ続けるということだ。イチゴのマーク(ソフト)は変わらないが、カットソー、Tシャツ、薄手のニットという原材料と工場は、期初計画通りに行うということになる。

 私は、この話をある大手アパレルの社長に話したところ、「うちは、全く同じ商品などつくっていない。追加生産と言ってもちゃんと季節にあわせて変化をさせている」と怒りをあらわにした。しかし、数ヶ月後、私の話を聞きたいという「現場」のMD長と生産部長に呼ばれ、同じ話をしたところ、「モヤモヤとした霧が晴れたようだ。多少の微調整は確かにやっているが、同じ素材、同じ工場を探し、何度もサンプルを作り直していた。この分析は目から鱗だ」と言われた。この社長はそのあとすぐに退任したが、情報システムの責任者も兼務していた彼は、いかに現場で何が起きているかを分からずシステム導入を推進していたかということがよくわかる。

 最近では、ZARAはサンプル作成に3D CADを導入し、なんと、一型の商品に30パターンものバリエーションを仮想的に事前準備し、トレンドがどちらに転んでも即座に生産開始することができるという。
 これらの情報はすべて二次情報であり、私の推測を多く含んでいるが、縮小する市場の中で競争に勝つためのトレンド型アパレルのビジネスモデルを紐解くヒントとして十分な分析であると自負している。
 また、同時に大量の情報を即座に分析するデジタルマーケティング技術、そして、都度行うサンプル作成を3D CADを活用するというところにデジタル技術が登場する。また、数多くのデベロッパーに通行人分析カメラを設置できれば、数万人のリサーチャーは不要になる。これは、AI(人工知能)を使えばわけなくできる。

 

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