敷地内薬局の不正入札でアインファーマシーズ社長逮捕、2024年度診療報酬改定に影響必至!

玉田慎二(医薬コラムニスト/ジャーナリスト)
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大谷喜一社長の言動を関係者は注視

 繰り返しになるが、業界最大手調剤チェーンの“事業会社の社長”が逮捕されたのだ。しかも、業界団体・日本保険薬局協会の会長会社でもある。影響は計りしれない。2024年度診療報酬改定では「大手チェーン叩き」や「敷地内薬局マイナス深掘り」は必至の情勢と、すでに大手調剤企業からは悲鳴の声が上がる。だからこそ、トップによる説明が求められている。

 実際に過去、不祥事発覚後のトップの対応がマイナス改定に影響したと見られる事例があった。2017年、大手調剤チェーン・クオール(東京都)による「付け替え不正請求」だ。一部店舗で従業員家族の処方箋をほかの店舗で調剤したかのように偽装し、処方箋の集中率を下げ、点数の高い調剤基本料で保険請求していた。当時、日本保険薬局協会の会長だったクオールの中村勝会長は責任を取り、協会の会長職を辞任。ところが、最後まで謝罪会見を行わなかった。

 翌年の2018年度改定では「外枠」という制度によって、大型門前薬局や敷地内薬局など「経営効率の高い」主に調剤チェーンをターゲットに約230億円もの報酬の引き下げが敢行された。トップの説明責任を無視した姿勢がマイナス改定を後押ししたと、大多数の関係者には映った。もちろん、トップが謝罪したからといって、罪が軽くなるわけでも、マイナス改定議論が回避されるわけでもない。ただ今後、次回2024年度改定議論が本格化するなかで、大谷社長の言動に関係者は注視する。

 敷地内薬局に関しては、首藤専務が日本保険薬局協会会長の立場で、シンポジウムで語っている。「登山家ではないですが、ソコに山があれば登るんだという感覚。企業家はソレをめざします」。敷地内薬局拡大の「状況をつくってしまったことがひとつ問題だとすれば問題で、乗っていく方がどうして悪いのかという思いがある」と続けた。

 薬剤師会からバッシングを受ける敷地内薬局の出店について、一般論として反論したものだ。その通りかもしれない。敷地内薬局は規制緩和によって拡大している業態だ。調剤チェーン企業が求めたというよりは、政府の規制改革会議が推進し増大してきた。ただし、ズルはいけない。登山家が険しい山に挑むとき、不正行為をして登頂をごまかすなどしては、本末転倒だ。

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